侍初4番で衝撃アーチをかけた。「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」の日本-メキシコ第2戦で、吉田正尚外野手(25=オリックス)が1回、先制の右越え満塁本塁打を放った。プロが参加するようになってからの侍ジャパン主要大会で「4番満塁弾」は生まれていない。7回にも追加点の犠飛を挙げ、5打点の打棒で2020年東京オリンピック(五輪)の主力入りへ、強烈にアピールした。初戦は痛恨の逆転負けも2戦目を快勝し、1勝1敗で今シリーズを終えた。

吉田正を迎え、球場内のボルテージが最高潮に達した。初回、無死満塁。チャンステーマの「Macho Man」も流れ、歓声を一身に浴びた。カウント0-1からの2球目。内角低めの直球を豪快なフルスイングではじいた。右翼スタンドに一直線で飛び込むグランドスラムだ。

「しっかりタイミングを計りながら打てると思った。球は低かったですけど、しっかり自分のスイングができました」

前日同様に第1打席のファーストスイングで仕留めた。第1戦でも初回の侍初打席で中前の先制適時打を放っていた。「自分なりに対応してアジャストすることができた」と抜群の対応力で5回にもしぶとく中前打。7回1死一、三塁では低めの変化球を逆方向へ飛ばし、犠飛でこの日の5打点目を生み出した。

高度なバッティング技術への信頼はチームの垣根を越える。現役時代に2133安打を誇るヤクルト宮本ヘッドコーチから強化試合に臨む前、直々に電話があった。「村上をよろしく。バッティングを教えてやってくれ!」。村上にも「吉田から教えてもらえ」と伝えられていた。球界を代表する名選手からも一目置かれる技術を証明した。

この日は4番を任された。背景には稲葉監督の「1打席の中の修正だったり、タイミングの取り方にしても1球ごとに感じながらやれている」という吉田評があった。試合後に指揮官は「初見の投手にしっかりと自分のタイミングで振れていた。勝負強さは魅力的。ここというところで任せられる。そういう選手が4番にいてくれると安心感がある。今日は心強く思っていた」と信頼度をさらに高めた。

4番について吉田は「任されたポジションで自分のベストを尽くすだけです」ときっぱり。わずか2戦で侍の中軸を担える力を示した。「日本の4番」として結果を残し、11月のプレミア12、20年東京五輪の主軸候補に名乗りを上げた。【古財稜明】

◆過去の日本代表の満塁弾 直近では16年11月13日のオランダとの強化試合で、鈴木(広島)がタイブレークで行われた延長10回に勝ち越しの満塁弾を打っている。他にプロが参加した主要国際大会では、13年WBC2次Rオランダ戦の坂本(巨人)15年プレミア12・1次R米国戦の松田(ソフトバンク)が記録しているが、4番で満塁弾を打った選手はいなかった。ちなみにプロ以外では、96年アトランタ五輪の決勝で4番の松中(新日鉄君津)が満塁弾を打っている。