日刊スポーツ評論家陣が球界のさまざまな事象に提言する今回の「野球塾」は、近鉄と日本ハムの2球団をリーグ優勝に導いた梨田昌孝氏(65)が登場。勝率5割ながら、甲子園で借金5を抱える阪神の立て直し方法を指南です。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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セ・リーグは広島があっという間に浮上してきた。その要因はさまざまだろうが、わたしは菊池涼の存在が大きいとみている。他球団の同じ2番打者と比べて四球の少ない超攻撃型が調子を上げてきたことが、バティスタ、鈴木らにも好影響を及ぼしている。

さて、阪神。もったいないゲームが目立つ。例えば5月8日のヤクルト戦(神宮)は5-0から投入した福永らがつかまり、延長12回7-7のドローに持ち込まれた。17日広島戦(甲子園)は、8回にひっくり返されると、9回は守屋らが7点を失って大敗した。

大事なのは「リリーフ」の役割である。この人選、起用法によって結果は変わっていたかもしれないということ。相手に傾いた流れは、最小限に食いとどめておくことが必要だ。それができなかったから対広島3連敗につながった。

若手に経験を積ませるのは結構だ。でも、勝てるゲームはきっちりと勝っておかないと。そのためにも今後は「第2先発」といえるようなリリーフ役を用意しておくことも視野に入れてもいい。特に、DH制のある交流戦はなおさらだ。

ちょうど勝率5割の阪神だが、借金がかさんでくるとベンチにも焦りが生じてくる。負けゲームでもジョンソン、ドリスらをつぎ込んでいかなければいけない状況に迫られてしまうもの。だからこそ、この5割ラインを死守したいものだ。

21日からのヤクルト3連戦は、相手の左打者に注意したい。初戦は青柳が先発するが、阪神バッテリーは右の山田哲、バレンティンらは抑えられる配球がある。逆に、坂口、青木に、若手で両サイドに打てる村上らを徹底マークすべきだ。

阪神としては甲子園での勝ちを重ねたい。ここでもいろいろな敗因はあるが、打てる、打てないより、まずは守りだろう。確かに甲子園のディフェンスは難しい。他球団では、外野手は距離感がとりにくい、内野手は土のグラウンドを気にするといった声が多い。しっかりと守りを固めたい。