首位ソフトバンクのエース千賀滉大投手(26)が今季初完封し、2位日本ハムとの直接対決で2・5ゲーム差に突き放した。9回、135球。最速156キロの直球を軸に2安打しか許さなかった。今季チーム100試合目で初の完投勝利投手となり、4年連続の2桁勝利を飾った。千賀は通算52勝目で育成ドラフト入団選手では巨人山口鉄に並ぶ最多記録となった。

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千賀がエースの貫禄で9個の「0」を並べた。9回2死からこの日2本目の安打を許したが、代打田中賢を一ゴロに打ち取り、育成同期バッテリーを組んだ甲斐と抱き合って喜んだ。

「中継ぎがたくさん投げていたので、今日は僕ひとりで投げるつもりだった」

5回1死一塁では外角ツーシームで宇佐見を二ゴロ併殺。8回は連続四球で無死一、二塁と得点圏に初めて走者を置いたが、代打杉谷は直球でスリーバント失敗を誘い、西川は内角への151キロ直球で見逃し三振。大田はカットボールで左飛に仕留めた。今季は縦だけではなくツーシーム、カットボールで横にも幅を使えているが、基本はやはりフォーシームの直球だ。

チーム100試合目で初の完投勝利。分業制とはいえ「1年に40完投」の理想を掲げる工藤監督にもうれしい完封で、「最後まで粘ってくれた。エースの証明。今年一番。(リリーフ陣が疲弊している)チームを助けてくれた」と褒めちぎった。千賀は通算92試合で先発しながら、完投は18年8月17日オリックス戦とこの日の2試合しかない。

先発に転向した16年から4年連続2桁勝利。「大きなケガをせずにやれているから」と話すが、今季は心身ともにエースに成長している。18試合、127イニングはともにチームトップだ。若手が増えた投手陣の中でも中心的な存在だ。今春のキャンプ中には甲斐野、杉山、板東という若手ルーキーを食事に誘い、それぞれの質問に丁寧に答えたという。これまでは若手を自ら誘うことはなかった。開幕後も大竹らに話かけ、相談にも乗ってきた。半年過ぎた今、甲斐野は「あのレベルでも探求心がある。あの実力で。そこは見習わないといけない」と改めて驚く。今季の千賀に妥協、甘えは見当たらない。

後半戦は2戦2敗だった。「右腕だけで投げないように」とフォームを修正し、首位攻防3連戦の初戦での快投につなげた。これで今カードでの陥落は消えた。右腕は今、4年間で一番頼りになる投球を続けている。【石橋隆雄】

▼千賀が2安打完封で4年連続の10勝目。千賀の完封は昨年8月17日オリックス戦に次いで自身2度目。4年連続2桁勝利は、ソフトバンクでは11~15年まで5年続けた摂津以来。また通算では52勝目。育成ドラフトで入団した投手では、山口鉄(巨人)の52勝に並ぶ最多タイとなった。