来季Vを目指す2年目矢野阪神が22日、甲子園で秋季練習をスタートさせた。井上一樹新打撃コーチ(48=元中日2軍監督)がいきなり精力始動。

「コミュニケーション・モンスター」の宣言通り、熱血対話から打撃強化に乗り出した。中でも高山俊外野手(26)の再生と大山悠輔内野手(24)の開眼は2大テーマ。矢野監督の信頼も厚い“井上道場”でドラ1位コンビを磨き、強力打線を目指す。

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強い日差しが降り注ぐ甲子園に、張りのある声が響いた。秋季練習開始を前に、円陣の中で井上打撃コーチが語りかけた。

「俺は厳しいぞ、逆に優しいぞ、と。年齢的にアニキであり、オヤジでありという感覚で構わんよと言いました」

前日の就任会見で「コミュニケーション・モンスターになる」と宣言。熱血コーチはロングティーの開始前にも野手陣を集め、もう1度熱く語りかけた。

「やる気があるならどんどん言ってこい。朝から夜に、いつでもつき合う。ただ、そういうのが見えないものは俺はほっとくよ」

来季優勝へ打線強化は不可欠。井上コーチは選手のポテンシャルを最大限引き出し、底上げを図る方針だ。

5カ所で行われたロングティーは、約1時間半に及んだ。1人1人に目を凝らし、以前から気になっていた2人に声を掛けた。「近本と高山が(同じ)組でやってた時に、ちょうどいいタイミングだなと」。近本には打率3割が最低条件とハッパを掛け、高山には「お前、近本のいいところ分かるか?」と問いかけた。小柄ながら今季9本塁打を記録した近本の技術に、見習う部分があると諭した。

高山は今季105試合に出場して5本塁打。16年新人王を獲得した能力を認めるからこそ、もっとできると確信する。「俺もどちらかというと器用系じゃなかった。高山の場合、ポテンシャルがあるだけに、もったいないなという風に見てた。いい笑顔するじゃないですか。あれを引き出しながら練習させるというのが、方向性かなと思いましたね」。早くも高山再生に手応えありだ。

大山の飛躍も欠かせない。今季は出場143試合で14本塁打。だが好機での凡退など、ここ一番で力を発揮できない場面も多く、8月に開幕から座った4番を外れた。井上コーチは中日での現役時代、勝負強さが売りだった。その極意伝授も大きな仕事だ。ロングティーの236振で118本の柵越えを放った大山も「いいところも悪いところも、しっかり課題を見つけてやっていきたいと」と意気込んだ。“井上道場”で2人のドラフト1位を磨き直し、来季の看板選手に押し上げる。【磯綾乃】