阪神入りしたロベルト・スアレス投手がソフトバンクでつけていた背番号は「90」だった。その前のホークスの90番といえば、水島新司氏の野球漫画「あぶさん」の主人公、南海の景浦安武だ。1973年(昭48)の連載開始から球団が配慮し、南海、ダイエー、ソフトバンクと親会社が変わっても準欠番にしていた。14年の連載終了がひとつの転機となり、水島氏の了解も得て16年にスアレスが後継者となった。

母国ベネズエラでは、建設現場で作業員をしながら草野球でプレー。15年はメキシカンリーグでプレーし、16年に日本行きの切符をつかんだ。最速161キロでパ・リーグの強打者を圧倒した姿には、漫画顔負けの痛快さがあった。陽気なキューバ人のモイネロとは違い、いつも物静か。鶴岡(現日本ハム)がソフトバンクに在籍していた時「子どものライオン」と呼んでいた。首が長く、澄んだ瞳で遠くを見つめる姿は、野生をたくましく生きる子ライオンにそっくりだった。

今季は外国人枠の関係と17年に右肘のトミージョン手術を受けたことも考慮して先発に転向。7月31日の西武戦では初回に3四球で2死満塁としたが無失点。50球投げて点を与えなかった“怪投”には、工藤監督も驚くばかりだった。1軍でチャンスがもらえず、2軍で先発していた時も、福岡・筑後市の施設で黙々と調整を続けていた。「肘はどう? 」と聞くといつも「ダイジョウブ」と日本語で返すナイスガイだった。

ヤクルトで来季もプレーする兄アルバート(30)とは仲良しで、声もうりふたつ。オフは毎年一緒にトレーニングを行う。阪神の来季開幕はヤクルト戦。兄弟対決も楽しみだ。【前ソフトバンク担当=石橋隆雄】