やっぱり「楽しい」が一番! 全日本女子野球連盟と西武ライオンズアカデミー共催の小学校高学年を対象とした女子野球教室が昨年11月、埼玉・和光市で行われました。県内外から17人が参加し、現役の女子日本代表や元プロ選手から指導を受けました。近年は女子硬式野球部のある高校も増加中。野球を通じて仲間を見つけ、楽しくプレーを続けられる環境が整いつつあります。

まずは「楽しく」続けてもらうこと-。女子野球日本代表(マドンナジャパン)コーチで18年ワールドカップ(W杯)優勝に尽力した志村亜貴子氏(37)は「小学生に野球を続けてもらえるようにするのが自分たちの一番の役割。楽しさを伝えるようにしています」と「楽しく」を強調します。守備の基本姿勢や足の運び方などを一通り説明した後は、笑顔でプレーを見守りながら時折、簡潔なアドバイスを送るだけ。教え込むというより、まずは楽しませる。実際、この日一番の盛り上がりを見せたのは終盤の“実戦練習”でした。

講師陣が守備位置につき、参加者が順に打席に立ってティー打撃で得点を目指すゲーム形式。当初の予定にはない内容でしたが、参加者の人数や雰囲気で急きょメニューに組み込みました。ヒット性の鋭い打球が飛び出す度に歓声が上がり、講師陣の華麗な守備にどよめきが起こります。判定やルールもちょっと「ゆるい」ゲームですが堅苦しさもなく「投げる・打つ・捕る」といった野球の原点を味わいました。

少年野球チームで少なからず見られた女子選手が、中学進学時に競技を辞めてしまうケースは多々あります。それでも昨今は、地域に女子だけの中学生クラブチームができたり、高校の女子硬式野球部も加盟数を伸ばしています。もちろん従来のように中学で男子に交じって学校の部活に入り、高校でも男子の野球部に選手として入るケースも。全体としてプレーを続ける選択肢が広がり、少しずつ環境が整ってきていると言えます。

今回の講師陣で最年少となる阿部希内野手(20)も「野球を続けたいという子が増えてきて、変わってきていると思います」と実感。宮城出身の阿部は「私の時は県内の高校にチームがなくて京都に出たんですが、今は宮城にも1校(クラーク仙台)できました。小中学生には環境が良くなっていると思います」と笑顔で話しました。

また、小学校高学年では一般に女子の方が体格に優れ、身体能力でも男子にひけをとりません。性格も真面目で、理解力が高い選手が多数。ライオンズアカデミーコーチで元西武捕手の吉見太一氏(39)も「女子だけの野球教室は初めてですが、教え方は男子と変えていません。運動能力は高いし基本に忠実。形がきれいですね」と感心した様子。埼玉県内に4校ある同アカデミーでは生徒総数400人超で女子10人以下と少数ですが、さまざまな活動や大会を通じ女子野球をサポート。同コーチは「第一には野球を通じて仲間を見つけて欲しいという思いがあります。いろんな友達を誘って野球をしてほしいですね」と話しました。

目の前にさまざまな選択肢の広がる小学校高学年。男子も女子も、心から野球を楽しむことが、大切な第1歩となります。

◆この日の講師陣

女子日本代表 

志村亜貴子コーチ(37)

清水美佑投手(21)

田中露朝(あきの)投手(23)

田中美羽内野手(21)

阿部希内野手(20)

ライオンズアカデミー

吉見太一(捕手=39)

原拓也(内野手=35)