「クワボール」が輝きを取り戻した。17年ドラフト1位の巨人鍬原拓也投手(23)が、オープン戦2度目の登板で6回途中9奪三振と好投。スリークオーター気味から投じるシンカーがさえ、3安打に封じ込んだ。原監督の助言で昨秋から横手投げに転向し、微調整を繰り返しながら一躍開幕ローテ候補に名乗りを上げた。チームは12試合連続白星なしでオープン戦最下位が決まった。

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サインに2度首を振った。6回1死一、二塁。鍬原は楽天銀次を投手有利で攻め、6球目に伝家の宝刀「クワボール」を外角いっぱいに決め、空を切らせた。「シンカーの精度が上がってきて、空振りもストライクも取れるようになった。一番自信のある球で勝負したくて自信を持って首を振った」と胸を張った。

シンカーが武器の即戦力右腕として、17年ドラフト1位で入団した。昨秋キャンプで原監督の助言を受け横手投げに転向。しかし制球が安定せず、自然に腕が振れる高さを模索するうちに、スリークオーターと横手投げの中間にあるオリジナルにたどり着いた。「真横で投げている時は、シンカーの感覚がつかめていなかった。多少腕を上げたことで前の感覚が戻った」と落差を取り戻した。勝負球としても使用し、全9個のうち4個の三振をシンカーで奪った。

前半は直球中心の投球で「クワボール」を隠した。3回までの41球中、直球が20球。シンカーはわずか2球だったが、3回以降は41球中、13球を投じた。「長いイニングを投げる時は前半に全部の球種を見せても対策される」と配球を変え、手玉に取った。

キャンプ中には2軍落ちを味わったが、逆転での開幕ローテ入りが見えてきた。ライバルたちは、畠が右肩周辺の肉離れ、高橋が疲労でペースを落とし、桜井も調子が上がってこない。2試合連続で結果を残し、原監督は「大候補だと思います。非常に強い戦力になるんではないかという大きな期待が出てきましたね」と賛辞を送った。

プロ入り2年で1勝だが、フォーム変更で生き残る道を見いだした。鍬原は「今までで一番いい投球ができた。自信にしていきたい」。人生で一番輝く1年にしてみせる。【久永壮真】

▽巨人原監督(先発鍬原に)「一番良かったと思います。(フォーム変更で輝きを取り戻し)そういう意味ではルーキー、新戦力。(先発ローテの)大候補だと思いますよ。強い戦力になるんじゃないかと大きな期待が出てきました」