成り上がり守護神の誕生なるか。日本ハムの育成3位長谷川凌汰投手(24=BCリーグ・新潟)が、DeNAとのオープン戦(札幌ドーム)の9回に登板。先頭打者を出塁させたが、後続を落ち着いて片付けた。オープン戦は5試合連続無失点。守護神候補の石川直が出遅れており、同タイプの最速153キロ右腕が、支配下登録&クローザー抜てきへ望みをつないだ。

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長谷川の必死さが、ボールの勢いを加速させた。9回2死一塁。7回に右翼へ3号ソロを放っていた佐野を、147キロ直球で右飛に抑えた。「ゼロで終われたのは良かった。細かい技術はまだないので。ストライクゾーンに強い球を投げることだけを意識しています」。先頭打者に安打を許しながら、落ち着いて後続を断った。育成からの支配下昇格へ向けて、また1つ結果を積み上げた。

自分でも気付いていなかった新たな武器が「真っスラ」だ。この日の10球はすべて直球だが、時折ボールは左打者の内角へスライドした。プロ入りまでは「きれいな軸回転のボールを投げたい」と、自身のクセ球を課題の1つと考えていた。だが1死一塁で対戦した神里を「真っスラ」で詰まらせて一ゴロに抑え、「そういうこともあるのか」と、バットの芯を外すボールとして効果的であることを認識した。

意図的に投げるレベルには達していないが、「真っスラ」に対するイメージは180度変わった。「140キロ後半で曲がったら魔球だと思う。自分の武器として出せるようになれば」と手応えをつかんだ。強い真っすぐに加え、本来は空振りも取れるフォークも武器とする。同タイプでクローザーの本命候補、石川直が上半身のコンディション不良で出遅れているだけに、長谷川の存在感は増している。

出番は3戦連続で9回。厚沢ベンチ兼投手コーチが「そこを目指してほしいというのが、監督と3人の投手コーチが思っていること」と話したように、期待は大きい。栗山監督も「困った時にしっかり腕を振って、甘く入っても強い球が投げられるかが大ベース。そういったことがもっと高いレベルになれば、抑えもできる」と評価した。

開幕延期となり、球団初となる育成から支配下登録への判断は、まだ先となりそう。それでも長谷川は「自分にとっては本当にチャンス。つかみ取れるよう、がむしゃらにやっていきたい」。今後も1軍同行を続ける予定。結果を出し続けて、一気に成り上がっていく。【木下大輔】

◆日本ハム救援陣の現状 キャンプを2軍で過ごした宮西は、1軍昇格後のオープン戦は3試合で防御率0・00と安定。実績のある秋吉も、3試合3イニングで1失点と順調に調整を重ねている。ほかに右投手では玉井、井口、西村のほか、新人の鈴木健も1軍入りが濃厚。起用法が流動的な金子、2年目・吉田輝の名前も挙がる。左腕ではオープン戦4試合でまだ失点のない公文、この日も登板した堀、ショートスターターも担う加藤がいる。

◆育成選手 支配下登録を目指し、技術向上など野球活動を行う選手。05年に初の育成選手ドラフトが開かれた。支配下選手65人以上の球団のみ最長3年間保有できる。最低年俸230万円、背番号は3桁。戦力外通告を受けた自由契約選手や外国人の採用も可能で、オープン戦や2軍の試合に出場できる。身分を支配下選手に移行すれば1軍出場可能。