日本野球機構(NPB)は19日、21日に開幕するプロ野球の日本シリーズで、セ・リーグの本拠地球場を含めて、全試合でDH制を採用すると発表した。ソフトバンクが投手故障リスク軽減などの観点から、18日夕方に全試合DH制を提案。この日に臨時実行委員会を開き、承認された。かねてセ・リーグのDH制導入を提唱してきた巨人原辰徳監督(62)は、球界発展のためにも、提案を受けて立つ考え。日本シリーズでの全試合DH制は、85年以来35年ぶり2度目になった。

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戦いの舞台となる京セラドーム大阪で一報を伝え聞いた原監督は、揺るぎない信念を示した。「有利とか不利とかいうことは度外視してね、選手の安全であったり、時間短縮であったり、スリリングな野球をするとか。近代野球の中で、野球界を発展させるという部分において、1歩踏み出す必要があるだろうと」。

かねてセ・リーグのDH制導入を提唱しているとはいえ、ソフトバンク側からの提案によって実現する今回のルール導入。相手はレギュラーシーズンからDH制用のチーム編成を行い、セの本拠地では普段は打席に立つことがない投手にも打順が回る。巨人にとっては不利になる要素とも考えられるが、そんな考えはみじんも見せない。

「有利とか不利とか、そんな論理はね、もうすぐ90年を迎える野球界に対して失礼ですよ。何をファンが望んでいるか。面白いシリーズになると思いますよ。スリリングな、息の抜けないね。打席に三振しにいくような選手は誰1人いない」と受けて立つ。

昨季は4連敗で屈した相手。日本シリーズは7年連続でパが制した現実がある。投手が打席に立つことがない力勝負が続き、パワーピッチャーが育つ。それが打者にも相乗効果を生む。原監督はセ・パの成績が開く一因にDH制があると提言するとともに、教育的な側面も感じている。「子どもたちがどれだけ夢を持てるか。レギュラーが9人より10人になれば教育的。甲子園だって。DH制があれば野球人口も増える」。守備は苦手だが、打撃が得意。足が速い。そんな一芸を生かしたスペシャリストの育成にもつながっていく。

五輪やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会、今季は大リーグのワールドシリーズでも全試合DH制を導入した。そして日本シリーズ。ファンファーストの精神の下、正々堂々の勝負を挑む。【前田祐輔】

▽斉藤コミッショナー 福岡ソフトバンク球団からの提案にもあるように、コロナ禍の特殊な状況下において、選手の疲労、肉体的負担、けがや故障を少しでも軽減するためには、例外的な処理も必要であると判断し、12球団の同意をいただきました。今シーズンの締めくくりとして21日から開幕するSMBC日本シリーズ2020において、ファンの皆様に熱戦をお届け出来ることを期待しております。