広島塹江敦哉投手(23)が新たな球種の習得を目指している。昨季チーム2位52試合登板と飛躍した左腕は、安定感向上のためチェンジアップを習得中。150キロ超の直球と球速差を出すことで、緩急を生み出せる。苦手とした右打者対策にも有効となるだけに、開幕までに完全習得し、さらなる飛躍を期す。

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静かな屋内練習場で1人、黙々と練習する姿に新シーズンへの覚悟が感じられる。塹江はシャドーピッチングやネットスローで汗を流した。これまでは先輩の中崎とともに自主トレを行ってきたが、今オフは独り立ち。明確な目的を持って練習メニューを消化し、キャンプに備えている。

「50試合以上は投げるつもりで準備している。52試合しか投げたことしかないので50試合ぐらいをいい内容で投げることを目標にしている」

昨季はシーズン序盤に勝ちパターン入りすると、チーム2位の52試合に登板した。ただ10月以降は防御率8・18と、終盤に調子を落とした。対右打者には、左打者への被打率2割1分1厘に対し、被打率3割9厘と相性悪かった。苦手克服のために新球種チェンジアップを習得中だ。

シーズン中のキャッチボール相手でもある森下らから助言を受けながら試行錯誤し、2つのパターンを試投している。ひとつは直球と同じ軌道で球速の遅い変化。もうひとつは大きな落差のあるもの。「投げている手応えはあるが、バッターが立ってどうか。しっかり投げられたらオープン戦や紅白戦で投げて使えるようにしたい。どちらかが一級品になればいい。バッターの反応がいい方を伸ばしていきたい」。この日はネットに向かって、何度も感覚を確認。新球種を習得できれば、最大の武器である150超の力強い直球も生きてくる。

中継ぎ強化は広島の浮上に欠かせない。フランスアや新外国人バードの来日が遅れているだけに、塹江にかかる期待は自然と高まる。「周りは(そのように)言ってくれるが、僕自身は変わらない。いい準備を続けていきたい」。チーム内競争に向けて、静かに武器を磨いていく。【前原淳】