楽天田中将大投手(32)が、20日の練習試合日本ハム戦(金武)に登板する。8年ぶりに古巣復帰し、初の対外試合に注目が集まる。新人時代、07年の対外試合初登板を振り返る。

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<07年2月26日:練習試合ロッテ戦=2回2安打無失点>◇鹿児島

投げた! ファンが来た! ノムさんも叫んだ! 楽天のルーキー田中将大投手(18=駒大苫小牧)が26日、鹿児島・鴨池球場でロッテとの練習試合に先発。前日25日のオープン戦が降雨中止となったが、急きょ決まったファンサービスの入場無料ゲームで2回2安打4奪三振で無失点と好投。自己最速タイの150キロをマークし、無四球と抜群の安定感で高校生離れした投球を披露した。野村克也監督(71)も「長嶋の再来や」と笑いが止まらなかった。

動じていなかった。慌てるそぶりもなかった。2回、田中はズレータ、大松に連打を浴び、無死一、二塁とされる。なおも神戸にカウント3-0。「四球だけは絶対に駄目」と本人も振り返る大ピンチ。ここから本領を発揮した。まずはど真ん中に直球を投げ込み、スライダーで空振りを奪ってフルカウント。最後はチェンジアップで空振り三振に仕留めた。「ストライクを取れる自信はあったので、別に慌てたりはしなかった」と言い切る姿には、風格すら漂った。

圧巻は続く。次のサブローも、1-2と追い込んで外いっぱいのスライダーで見逃し三振。今江を二ゴロに打ち取り、ピンチをしのいでみせた。マウンドを駆け降りると、ベンチで野村監督が待っていた。手を差し伸べられ、頭をポンとたたかれると、満面の笑みがはじけ飛んだ。名将は新人との握手について「ないことないんだろうけど、記憶にないな」と笑った。

後ろにそびえ立つ桜島のように、初めから堂々としていた。初回先頭の西岡への初球は、いきなり内角へスライダーを投げ込んだ。次の福浦への初球は、高校時代にマークした最速タイの150キロを計測。キャンプ中の紅白戦2試合も含め、プロ入り後、いまだ無四球と抜群の安定感を誇っている。

田中 悪い癖の力みもなく、落ち着いて投げられた。テレビでずっと見てきた人たちと対戦できたので、楽しかったですよ。自分の力がどこまで通用するか試したかったので、よかった。リラックスして投げられたことも大きいですね。緊張もしなかった。

窮地に立たされても、取り乱さない。高卒新人にして、このずぶとさ。計5イニングで4発を浴びた紅白戦との違いに、紀藤投手コーチは「モチベーションの変化でしょう」と語った。初めての敵チームとの勝負。投げ合うは同じ新人の大嶺。前日25日には、同い年鹿児島工・榎下らと食事し、リラックスしていた。

3月1日に北海道の母校で卒業式に出席する田中は、翌2日のソフトバンク戦(ヤフー)で中継ぎ登板し、オープン戦デビューを飾る。デビューのはずだった前日25日のロッテ戦は雨天中止。ドラフト制後史上初のオープン戦高卒ルーキー先発対決は幻となった。それでも平日の練習試合で1万13人の観衆がスタンドを埋め、マー君への注目度も高まるばかりだ。記録には残らない、田中には自信を、チームには信頼をしっかりと残した圧巻ピッチングだった。(所属、年齢など当時)