一塁ベース上で中日ビシエドから言葉をかけられると、少しだけほおを緩めた。阪神大山悠輔内野手(26)は17打席ぶりの「Hランプ」から勢いを取り戻した。

「ここ最近、自分としても結果が出ていなかった。チームの流れを止めていると思っていた」

心のつっかえを取り外した1本は1点リードの4回だ。2打席目、先頭で岡野のスライダーを強振。痛烈なライナーに感情を乗せ、三遊間を破った。久々の安打から1点を追加すると、3打席目以降は本来の放物線を取り戻した。

5回無死一、三塁では藤嶋のスプリットを左翼後方へ犠飛。7回無死一、三塁では山本の146キロを打ち返し、中堅フェンス手前まで犠飛を届かせた。

「今日はしっかり打点も取ることができた」

9回にも左前打を放ち、10戦ぶりのマルチ安打。何より2打点で大勝に導けた事実に胸をなで下ろした。

内野ゴロでも外野フライでも、泥臭く1点をもぎ取りにいく。主将として4番として、21年虎打線のテーマを大切にしている。

「打点が一番重要だと考えているので。事を起こさないことには何も始まらない。なかなかうまくはいかないですけど、そこは常に意識してやっています」

これで今季6犠飛は両リーグ単独トップ。2犠飛を決めた1日を、復調のタイミングにしたいところだ。

時にはあえて名前も挙げて叱咤(しった)激励してきた矢野監督も、ホッとひと安心といったところか。

「悠輔自身も悔しい思いをしていた。毎日結果が出る世界でどうしても気持ちのアップダウンもあるし、4番ということで打てない時はモヤモヤもあると思う。こういうところからきっかけにしてもらいたい」

指揮官の思いは本人に伝わっていることだろう。

大山は試合終了直後にはもう気を引き締めていた。

「これを続けていかないと意味がない」

もちろん、本領発揮はこれからだ。【佐井陽介】

阪神ニュース一覧はこちら―>

セパ勝敗表はこちら―>