今季のプロ野球をにわかに賑わせている選手たちがいる。

山賊打線の一角を担う西武愛斗外野手は前半戦で8本塁打を放った。日本ハム3年目の野村佑希内野手は三塁のレギュラーに定着し、広島高橋昂也投手は先発を託される。フレッシュオールスターでは2年目の広島韮沢雄也内野手が1安打を放ち、ソフトバンクのドラフト1位ルーキー、井上朋也内野手はフル出場した。

すべて、花咲徳栄(埼玉)出身のプロ野球選手。

15年 西武4位武田愛斗

16年 広島2位高橋昂也

17年 西武2位西川愛也外野手、中日4位清水達也投手

18年 日本ハム2位野村佑希

19年 広島4位韮沢雄也

20年 ソフトバンク1位井上朋也

同一高校から連続でドラフト指名を受けたのは、中京大中京(65~71年)、愛工大名電(81年~87年)、大阪桐蔭(10~16年)の7年連続が歴代最長。花咲徳栄は井上朋のプロ入りで6年連続となり、PL学園(93~97年)などの5年連続を抜いて歴代2位タイになった。

今年もドラフト候補が複数いて、最長記録に並ぶ可能性がある。

なぜ今、花咲徳栄なのか。

近年の花咲徳栄OBには、打撃を高く評価される〝強打者〟タイプが目立つ。高校からスムーズにプロの世界に入り、活躍する選手が多い。「教えるバッティングが、木製バットに合っているのは間違いないと思う。高校時代に何十発打ちましたという選手が、大学やプロに行って案外ダメなこともあるが、ウチの選手たちはうまいこと合っているんだと思う」と01年から指揮を執る岩井隆監督(51)は明かす。

桐光学園(神奈川)時代の恩師で、花咲徳栄の前監督として00年に亡くなった稲垣人司氏の打撃論が、軸になっている。「ヘッドを走らせる。ボールを前でとらえる」。3年間かけてこのフォームを身につけさせることで、金属バットよりも芯の範囲が狭い木製バットの打撃に自然と、スムーズに移行できるという。

「僕は選手としての実績は全くないですから。教えられる打撃は、何種類も持っている訳ではない。でも、木製バットに合うような技術は教えてやれていると思います」と言う。3年夏の引退後に、木製バットを使ったフリー打撃を視察したスカウトが「こんなに木のバットで打てる選手は見たことない」と驚くほど、すんなり木製に慣れる選手が多い。(後編につづく)【取材・構成=保坂恭子】

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