日本ハム伊藤大海投手が西武14回戦(メットライフドーム)でプロ初完投初完封勝利を挙げた。9回を自己最多134球で投げきり、山賊打線を4安打のみで封じた。西武相手には初勝利となり、これでパ・リーグの他5球団からの白星をコンプリート。東京五輪後の初勝利、新人トップの8勝目も重なり、31日に24歳の誕生日を迎える次代のエースが、23歳のラスト登板を最高の形で締めくくった。

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「疲れました」と、伊藤は試合後、笑顔でえくぼをつくって答えた。出来ることを尽くしてたどり着いたプロ初完投は初完封勝利。チームでも今季初の快投は、数々の悔しさを力に変えてきたから現実となった。

「思い入れのあるところ」と表現するのがメットライフドーム。試合前まで2戦2敗だった。4月14日は先制点を与えて2敗目を喫し、5月21日は変化球に頼りすぎて4敗目を喫した。

「ここで負けてからですよね? 」。4敗目の後から自身6連勝を飾ったのは、突きつけられた課題と真っすぐに向き合って成長できたから。勝つために必要なことを教えてもらってきた場所で、先制点は与えず、直球を軸にした投球をみせた。8回終了時に続投の意思を聞きに来た荒木投手コーチに「はい、いきます!」。最後まで自分の力と経験値を出し尽くした134球だった。

「今日は絶対、野球を楽しむ」と、決めていた。五輪後の初登板となった21日楽天戦は5回6失点(自責5)で黒星。直後から、その映像を「ずっと見ていました」と要因を探っていた。客観視して気付いたのは自身が「楽しそうに野球ができていない」ことだった。大きく反省した。

「ここで(野球が)できるのも当たり前じゃない。そういう部分をしっかりかみしめるじゃないですけど、昨日もいろいろYouTubeで野球の動画を見たりして、気持ちを高めて入ってきました」。5回には同学年で8月上旬まで同僚だった平沼に対して計測不能の超スローカーブを投じた。「練習の時に平沼が『真っすぐ勝負でみたいなジェスチャー』をしてきたので、何とか見事な空振りをさせたいなと思って」と遊び心も交えながら、直球も力加減をケースごとに調整した。「今日は少しでも後に余力を残してっていう形で投球の中でのメリハリがあった」と納得の内容だった。

「人としてもしっかり成長できるように、ですね。野球だけでなく、大人に、社会人になっていけたら」と23歳のラスト登板を飾り、24歳の抱負を語った右腕。日本ハムの新時代を築いていく。【木下大輔】