おめでとう、一平ちゃん! 阪神小川一平投手(24)が、プロ2年目で初勝利をつかんだ。緊張の面持ちとは裏腹、お立ち台で出てきた一言は度胸満点。「同期の(西)純矢と及川より遅い1勝となったんですけど、しっかり頑張っていこうと思うので…『一平ちゃん』と呼んでください!」。にじみ出る愛嬌(あいきょう)でファンの心もがっちりつかんだ。

強気が流れを引き寄せた。ロハス弾で同点に追いついた直後の6回に2番手で登板。中村から内角直球で見逃し三振を奪うと、オスナ、サンタナの助っ人勢も手玉に取った。「去年は打たれそうとか、ネガティブなことばかり考えてたんですけど、今はしっかり自分の中で強気に考えて」。1回をきっちり無失点。立ち向かう姿は味方にも伝わる。その裏、大山に勝ち越し2ランが生まれ、小川に勝ち星がついた。「自分1人じゃ取れない勝ちだったので、すごくうれしいです」。みんなでつないだ記念の白球を大事に握りしめた。

東海大九州から19年ドラフト6位で入団。同期は西純、井上、及川ら「甲子園のスター」がずらり。「1番に1軍で出られるように」。注目される年下の存在は発奮材料だった。そして土台にあったのはアマ時代からの強い信念と向上心だ。大学時代は社会人との練習試合が終われば、いつも相手チームに駆け寄った。対戦したばかりの投手やコーチに、投げ方や配球について聞いて回っていた。このオフはフォークを習得するため先輩だけでなく、年下の西純ら縦の変化球を持つ仲間にも聞きまくった。いいものは誰からも取り入れる素直な姿勢。積み重ねた全てが、この日につながった。

今季は1軍キャンプスタートも調子が上がらず、2軍では先発も経験。8月下旬の昇格後、7試合の登板で失点は1試合のみ。成長を続ける右腕に、矢野監督も「今の一平ならどの場面でも行っていいかなと。1勝できたんで、これからどんどん自信を持っていってもらいたい」と太鼓判。激しい首位争いの中で、ニューヒーロー「一平ちゃん」が躍動した。【磯綾乃】