これぞエースだ! 阪神先発の西勇輝投手(30)が5回1失点の好投で史上140人目の通算100勝を達成した。大台に7度足踏みが続いていたが、ヤクルト3連戦で28失点した苦しい台所事情を救う“8度目の正直”で5勝目。チームの両リーグ60勝一番乗りを導き、2位チームに約2カ月ぶりに3ゲーム差をつけた。再進撃の猛虎が一気に首位独走態勢を築きにかかる。

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記念のボードを手渡されると、西勇はほっとした笑みを浮かべた。「自分が100勝まで勝てるとは思ってなかった。本当に感謝を感じられた1勝。1人では勝つことができないというのを、本当に感じた1勝です」。5回1失点で6月18日以来の白星。平成生まれでは巨人菅野以来2人目の大台は、支えてくれた人たちとつかんだ白星だった。

7度の足踏みが続く中、テレビで試合を見た息子に言われた。「パパ、楽しそうじゃないよ」。大事なことを思い出させてくれた。「自分で自分を苦しめていた部分があった。あらためて、もう一度、楽しんでやってみようかなと。そう思えたことを言ってくれた息子にも感謝したいです」。

ピンチでも笑顔で、強打者も強気に抑えた。3回2死一塁では7試合連続本塁打がかかる4番鈴木誠をチェンジアップで遊ゴロ。5回2死満塁は、首位打者を争う5番坂倉を直球で遊飛。「よっしゃー!」。雄たけびに気持ちが表れた。

通算276試合目で大台に到達した。2年目に初めて肩を痛めた時、それが故障と言うのかすら分からなかった。そんな「ケガ知らず」の原点は、幼少期にあるのかもしれない。小学4年で野球を始めた当初は「横投げ」だったという。「一番強くボールを投げられたのが、ドッジボールをしてる時。その要領でまねして投げてみろ、って」。

プロの13年間も本人にしか分からない感覚で、投げる腕の角度を微妙に変えてきた。「体に分度器を置いたとして、大体70度~85度ぐらい。毎日投げるわけだから、痛くならないように」。練習中は80度で投げ、試合では75度で投げることも。同じ箇所の酷使を避け、故障を防いできた。角度を変えても球の軌道が変わらないのは、天性の感覚と積み重ねた技術のたまものだ。「腕に合わせて、体の動きを変えればいいだけ。いろんなところで投げられる」。強い体でたくさんの経験と白星を重ねてきた。

巨人が敗れ、2位とのゲーム差は7月9日以来の3に開いた。ヤクルト戦で計28失点した投手陣も救う大きな1勝になった。「やっと節目の100勝勝てたので、気兼ねなく、思いっきり、楽しく、やっていきたい」。優勝争いの佳境で、大黒柱が笑顔を取り戻した。【磯綾乃】

▼通算100勝=西勇(阪神) 10日の広島17回戦(マツダスタジアム)で今季5勝目を挙げて達成。プロ野球140人目。初勝利はオリックス時代の11年4月17日楽天3回戦(甲子園)。西勇は6月18日巨人戦で99勝目を挙げてから6連敗。王手から6連敗以上を喫して達成は50年川崎(西鉄=7連敗)81年小林(阪神=6連敗)81年野村(大洋=6連敗)に次いで4人目の難産だった。

▽阪神矢野監督(西勇について)「しっかり粘った勇輝らしいピッチングやった。100勝の手前で、かなり時間がかかってしまって、それでも意識高く、なんとかしようという練習の姿は見ていた。これでちょっと吹っ切ってくれたらな、と。単なる通過点だと思うんで。さらに、150、その上と目指していってもらえればなと思います」

▽阪神梅野(3試合ぶりに組んだ西勇をリード)「西さんが苦しんで苦しんでの1勝ですけど、乗り越えたからこそ101勝、102勝というステップがあると思う。このゲームをつくれたことがうれしい。100勝というすごい記録を一緒に刻めたということは捕手としても本当に光栄です」