阪神岩田稔投手(37)が1日、兵庫・西宮市内のホテルで現役引退会見に臨み、プロ16年間を振り返って号泣した。

4、5年前から「そろそろかな」「まだまだいけるぞ」「負けへんぞ」という感情が混在していたという。

今年1月には新型コロナウイルスにも感染。「そこから思ったより体は元気になったんですけど、気持ちの方がそんなに昔ほど燃えてくるようなものがなくなってきて。自分の気持ちに負けたというか。そのタイミングで引退の方を決意しました」と決断までの経緯を説明し、「この気持ちでタイガースのユニホームを着てプレーしているのは失礼」と引退を決断した。

会見序盤では「僕の中ではあっという間に時間が過ぎた16年でした。肩の荷が下りた感じです」とすっきりした表情も見せていたが、1番最初に引退報告した相手を問われると「妻です。そして大切な家族に…」と続けた後、涙が止まらなくなった。

それでも「やりきりました」と強調。「大阪で育って、高校も大学も大阪でお世話になっている。その中で関西の球団と言えばタイガース。縦じまのユニホームを着られて、本当に幸せです」と感謝した。

16年ぶりのV奪回へ目指すチームメートに向けて「僕が入って1度も優勝経験がない現状ですけど、この16年という月日の中でいろんな選手が優勝へ向かって突き進んでくれている。今こうして優勝争いをしてるのが、すごい僕自身も楽しませてもらっている。そこの戦力に少しですけど加われたりして…ぜひ優勝してほしいです」と力を込めた。

05年秋の大学・社会人ドラフト希望枠で入団。大阪桐蔭2年冬に発症した1型糖尿病と闘いながら、3年目の08年に10勝をマークするなど先発ローテを長年支えた。

プロ16年間で通算200試合登板、60勝82敗、防御率3・38。09年3月にはWBC日本代表として世界一も経験した。

現役生活を通して1型糖尿病の啓発活動に努めた功績も評価され、来季は球団内にポストを用意される可能性が高い。

▽阪神秋山(岩田稔に花束贈呈)「どんな時も多く投げ込む姿、走り込む姿、多くを学ばさせてもらいました。岩田さんの引退は悲しいですが、これから僕たち後輩が強いタイガースになるため、岩田さんみたいな向上心を持って頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました」

▽高岡淳さん(関大監督時に岩田稔を指導)「最初は(大阪桐蔭)西谷監督から『2年間は使えません』と言われて入学して、社会人チームに行けたらラッキーという投手でした。病気もある中、プロで10年できるかどうかと思っていた。よくやったと伝えました」

 

〇…阪神嶌村球団本部長は谷本球団副社長と引退会見を見守った。岩田稔入団時の05年秋はスカウトディレクター。「1型糖尿病患者の皆様に勇気を与えるとか、そういう強さがあってこそ」と現役16年間をたたえた。引退試合やセレモニーは「優勝争いしている状況ですので、頭に入れて検討しながら、どのような形が最善なのか、矢野監督とも相談しながらやっていきたい」。来季は球団にポストを用意する可能性が高い。