今季限りで現役を引退する平成の怪物・西武松坂大輔(41)の「影武者」として一躍有名になった男がいる。阪神谷中真二スコアラー(48)だ。横浜高で甲子園春夏連覇を成し遂げた松坂を一目見ようと、入団1年目の99年春季キャンプ(高知)は大フィーバーとなった。そこで生まれた影武者伝説。谷中スコアラーが当時を振り返った。【石橋隆雄】(全文2029文字)

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「影武者」を命じられたのは22年前、99年2月14日のバレンタインデーだった。谷中さんが「とんでもない数の人が来ていた」と驚くように、西武の高知・春野キャンプは怪物ルーキー松坂をひと目見ようと1万5000人のファンで膨れ上がっていた。

ブルペン横の控え室から陸上競技場への500メートルほどの移動も困難なほどの人だかり。のちに中日の監督を務める森繁和2軍投手コーチ(当時)が谷中さんに「やれ!」と松坂のユニホームを着て影武者になるように指令を受けた。その当時の日刊スポーツの記事は以下の通り。

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1万5000人のファンが集まった高知・春野にニセ松坂が現れた。ブルペン横の控え室から18番のユニホームが一気にダッシュ。それに気がついたファンが条件反射のように追いかける。500メートルほど先の陸上競技場にまで逃走劇は続き、真っ先に追いついたファンの顔が一瞬引きつった。18番の主はプロ3年目の谷中だった。当の松坂は谷中のグラウンドコートのえりを立て、帽子を目深にかぶり悠々と移動。松坂フィーバーに沸くファンを驚かせようとした冗談だったのだ…

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