矢野阪神が非常事態に直面した。初回に近本光司外野手(26)が右ハムストリング(太もも裏)の強い張りを訴えて途中交代。さらに高橋遥人投手(25)も左肘に違和感を覚えた模様で、完封を目前の9回に1度はマウンドに上がりながらも降板した。中日に快勝し、首位ヤクルトと0・5ゲーム差に接近したが、シーズン終盤を引っ張ってきた投打の柱が離脱すれば、逆転V、そしてポストシーズンに大きなマイナス材料になる。

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奇跡の逆転V、そしてポストシーズンに暗雲が垂れ込めた。投打の柱に、まさかのアクシデント発生だ。3番近本が1回無死一、三塁で二ゴロを放った。先制点を挙げたが、一塁へ全力疾走した際、一瞬、顔をゆがめ、そのままベンチ裏へ。右ハムストリング(太もも裏)に強い張りを感じたため、大事を取って2回の守りから板山と交代。試合中に西宮市内の病院で検査を受けた。

リードオフマンの負傷交代に、矢野監督の表情も曇った。「近本もあまり張りが出たことがなかったんで。これ以上悪くなることは避けたかったんで代えた。(診断の)結果も何もないし、今後のことは分からない」。近本は全140試合に出場し、打率3割1分3厘、10本塁打、50打点、24盗塁。178安打はリーグトップで、最多安打のタイトルを確実なものにしている。後半戦は打線の得点力が低下する中、好調の打撃で引っ張ってきた。残り3試合だけでなくCSまで故障が長引くと、大きな戦力ダウンは避けられない。

追い打ちをかけるように、9回表の守備でもショッキングな場面があった。先発高橋が、1度はマウンドに上がったが、トレーナー、福原投手コーチと話し合い、ベンチに下がった。そのまま矢野監督は小川に交代を告げた。中日打線を8回1安打無失点で、球数は90球。今季3度目の完封も狙える中での緊急降板。指揮官は「(9回は)いけなくはなかったが、ちょっと違和感があるんで、無理をさせないでおこうかと」と説明した。その後、アイシングした姿でベンチに高橋は戻ってきたが、左肘の違和感とみられる。

高橋は故障がちで、今季は上肢のコンディション不良で出遅れた。9月に復帰し、7試合先発し4勝2敗。いずれも中5日でヤクルト、巨人にぶつけるなど、首脳陣の信頼も厚く救世主的存在となっている。ポストシーズンもフル回転が期待されるだけに、軽傷を祈るばかりだ。首位ヤクルトが逆転負けを喫し、マジックは3のまま。矢野阪神はこの日の快勝で0・5ゲーム差に接近したが、喜べない夜となった。【石橋隆雄】