さあ、最後の船出だ。ラストシーズンに臨む阪神矢野燿大監督(53)が開幕前日に日本一への熱い思いを語った。

静寂に包まれた練習前の京セラドーム大阪。指揮官の口から思いがあふれ出た。「本当にこのチームが大好きで、自分で言うのもなんですけど、めちゃくちゃいいチームになってくれている。だからこそ優勝という、いいチームだという証しの優勝というのを、ぜひ全員でつかみ取りたい」。その言葉は誰よりも熱い。

「一番大事なのは僕たちの野球をやり切ること」。繰り返したのは「俺たちの野球」だった。就任時から凡事徹底を口にしてきた。凡打の際の一塁への全力疾走、打たれた後のベースカバー。諦めない気持ちが子どもたちの手本にもなる。「この3年間、選手の背中を押すっていうことは俺は誰にも負けずやってきた思いがある」。失敗しても選手の背中を常に押してきた。

練習前の前日ミーティングでは、宝物にしている1枚の写真について選手に語りかけた。就任1年目、19年のCSファーストステージのDeNA1戦目(横浜)。8回に北條が逆転三塁打を放ったワンシーンだ。シーズン序盤につまずき苦しい戦いを強いられたが、最後は粘り腰の6連勝でCSの壁をこじ開けて、横浜で進撃-。諦めず生き生きと野球を楽しむナインの姿に、試合後、涙を流した。

「俺も何回もインタビューで泣いてるけど、あれって挑戦してる姿とか、諦めない姿勢とか、なんか俺らの野球をやりきってくれた選手の気持ちが分かったり、伝わってくると、すげ~こいつらとか思うとこみ上げてくるのよ」。退路を断って臨む異例のラストシーズン。何度でも泣く準備は出来ている。【桝井聡】

◆19年クライマックスシリーズ・ファーストステージVTR DeNAとの敵地横浜での初戦は、序盤からリードを許す苦しい展開。だが6点を追う7回、北條の3ランなどで4点を返し、8回、1点差に迫ると北條が逆転の2点三塁打。8-7の劇的な大逆転勝ちに、試合後、矢野監督は感情が高ぶり、約20秒沈黙。目を潤ませた。続く2戦目はサヨナラ負けも、3戦目は2-1で競り勝ってステージを突破した。

〇…阪神ナインが開幕前日に「あいさつ」の練習を行った。今季もホームゲームで試合終了後に勝っても負けてもファンにあいさつする。この日の練習中に、野手が一塁線上にずらりと並び、立ち位置などを練習した。佐藤輝は矢野監督の隣で開幕戦勝利をイメージしたのか、無人の右翼席に満面の笑みで両手を大きく振っていた。