白髪交じりの「小さな大投手」が、21年連続勝利を果たした。ヤクルト石川雅規投手(42)が今季3度目の先発登板で6回3安打無失点。同じ四十路(よそじ)の青木から先制アーチの援護を受け、現役最多の178勝目を挙げた。身長167センチと野球界では小柄。直球は130キロ台ながら、老練な投球術を惜しみなく発揮した。入団1年目からの21年以上連続白星は史上3人目、左腕では初の快挙となった。

【関連記事】ヤクルトニュース一覧

42歳の石川が投げて、40歳の青木が打って勝つ。ドラマチックな展開で石川が勝ち取った白星は格別だった。お立ち台で青木がいった。「石川じいさんのためにがんばりました!」。負けずに石川も「青木おじさんが打ってくれたので気合が入りました!」。21年連続勝利となる今季初勝利。試練は初回から待ち受けた。

連打と四球で1死満塁。「なんとか最少失点」。5番ロハスを内と外を投げ分け捕邪飛。続く小野寺にも同様、真ん中への甘い球は皆無だった。追い込んでから内角低めに決まった直球131キロで見逃し三振。ピンチを脱し0行進を続けると、4回に青木が先制ソロで援護弾。ロッカーは隣同士で、勝てないとき、弱音を吐くこともあった。そのたびに「大丈夫。石川さんなら大丈夫ですよ」。バットでも強烈なメッセージを受け、23歳年下の内山壮のミットめがけて腕を振った。

身長167センチ。入団1年目から21年連続勝利を挙げ、通算勝利数は178勝で黒星と並んだ。「勝ったときってうれしいけど、すぐ次にいきますし。負けの悔しさはすごく覚えている。それが次への活力になる」。開幕2連敗で、約2週間の調整期間を経て今季3度目の登板。この日の最速は137キロで、最遅は96キロのカーブだった。緩急と制球こそ生きる道だと信じて21年。「自分の特徴を生かせたら野球ってできるもんだと小さいころから思っていた。遅くても工夫していければ抑えられると、僕自身も信じてやっている。それをぶれずに今後もやっていければ」。小さな大投手の神髄が詰まった92球だった。【栗田成芳】

▽ヤクルト石川の父昭芳さん(73)「体が小さくて、よく21年よくやってこれたなって。大きなケガがないおかげじゃないかなと。ヤクルトに入って、長くて3年かなという感じでいたんですが、ここまでやってこれたのは、負けたくない、やめたくないという気持ちもあったと思う。今日はみんなに助けられた。自分1人で勝てるスポーツじゃないので、選手全員の勝利だと思っております」