今季初先発マスクの広島中村奨成捕手(22)が「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム3回戦で、攻守にわたって勝利に貢献した。先制点を許す判断ミスもありながら、1試合2盗塁刺を記録。チームとして盗塁をアウトにしたのが前日まで2度しかなかった。打撃では逆転した5回2死満塁から走者一掃の二塁打。昨年6月1日の日本ハム戦以来の適時打となる今季初打点で勝利を呼び込んだ。

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流れは、広島のスコアボードに「6」が灯る前に変わった。日本ハムのスコアボードに「0」をともした5回表の捕手中村奨の肩だった。2死一塁から清宮の初球にスタートを切った一塁走者今川をストライク送球でタッチアウト。試合前まで今季広島捕手陣が2つしか記録していなかった盗塁刺が、この日2つ目。スタンドがドッと沸いた。ワンプレーで潮目が変わり、直後に6得点。18年楽天3連戦以来4年ぶりの交流戦カード勝ち越しを決めた。

「昨日ふがいないスローをしてしまっているので、その反省も踏まえて。今日は練習でいいものが出ていたので。練習通りできたかなと思います」

肩で変えた流れをバットで一気にたぐり寄せた。5回裏の攻撃。満塁から3四死球で3-1とし、なお2死満塁から日本ハム鈴木の浮いた真っすぐを捉え、右翼に上がった飛球はわずかに右翼手万波のグラブを越えた。今季初打点は、試合を決定づける走者一掃の二塁打。昨年6月1日、同じ日本ハム戦以来の適時打となった。

外野に本格挑戦した今季、巡ってきた本職での先発だった。0-0の3回2死一、三塁の守備では、冷静さを欠いた。野村の初球にスタートを切った一塁走者清宮の動きに迷わず二塁送球も、清宮は一、二塁間でストップ。タイミング良くスタートを切った三塁走者の生還を許した。BIGBOSSの術中にはまり「準備不足」と猛省。その後は落ち着きを取り戻し、昨年プロ初先発捕手で完封勝利した九里との呼吸を合わせた。

外野本格挑戦の中、捕手出場が巡ってきたのは盗塁阻止率が1割にも満たなかった捕手事情がある。攻撃陣も交流戦ではつながりを欠くだけに、攻守に渡る活躍はひとつの光明といえる。佐々岡監督は「今日はしっかりと刺してくれたし、打撃での調子いいからファームから上がってきている」と起用に応える働きをたたえた。好機をものにした22歳はまだ満足していない。「一番は試合に出たいです。今日みたいなプレーを引き続き、続けていけたら」。ポジションにこだわらず、試合出場にこだわっていく。【前原淳】

○…先発九里は5回2/3を3失点で3勝目を手にした。6-1と逆転に成功した直後の6回に2連続二塁打で失点。さらに2死二塁から宇佐見の中前適時打で3点目を失い、2死一塁となったところで降板した。2戦続けて回の途中でマウンドを降り、「回の途中で降りるのは悔しい。中継ぎの抑えてくれた投手に感謝」。回途中から登板し、抑えたターリーをはじめ、中継ぎ陣に謝意を示した。

○…不安を残す形で途中交代した西川は、3日に様子を見て出場可否を判断する。6回2死から中前打で出塁。一塁上でベンチのトレーナーを自ら呼んだ。1度はベンチ裏に下がり、治療に入ったが、そのまま出場。直後の守備から交代した。試合後に佐々岡監督は「心配なところ。まだちょっと様子が分からないので、(判断は)明日以降になると思う」と、コメントするにとどめた。

○…4番手の森浦は1イニングを無失点で抑え、10戦連続無失点となった。3点差の8回に登板。先頭に安打を許したが、後続の万波、アルカンタラ、宇佐見を3者連続三振とし、スコアボードに「0」を刻んだ。「先頭出て焦ったが、3人三振取れて、結果的に良かった」。今季初登板の4月27日ヤクルト戦こそ1失点したが、以降は無失点。昨季チーム最多登板左腕の調子が上がってきた。

○…ターリーがピンチの芽をつんだ。6回、3点差に迫られ、なお2死一塁で救援登板。中島を3球で一ゴロに仕留めた。「目の前の打者をアウトにすることだけを考えて。九里が一生懸命試合をつくっていた。流れを後ろにつなぐように、勝ちをつなぐように投げた。(日本ハムとの)シリーズを勝ち越せて良かった」。わずか3球の登板に終わったが、3ホールド目を挙げ、勝利に貢献した。