巨人が緊急補強に動いた。パドレス傘下3Aエルパソを自由契約となっているイアン・クロール投手(31)と入団契約に合意したことが4日、分かった。近日中に正式発表される。クロールは鋭いスライダーを軸に150キロ前後の直球と変化球が武器の左腕。メジャーでの登板243試合はすべて中継ぎのスペシャリストで、エンゼルス大谷や日本球界復帰を果たした広島秋山とは元同僚だ。巨人が課題のブルペン陣を強化し、巻き返しへの態勢を整える。

    ◇    ◇    ◇

このままでは終われない。立て直しを図る2位巨人が白羽の矢を立てたのは、日本球界に復帰を果たした広島秋山の元同僚左腕だった。クロールは今季は3Aエルパソのみでプレーし、24試合で1勝1敗2ホールド2セーブで防御率7・46。メジャー昇格はなかったが、初登板から昨季までメジャー通算243試合に登板。全試合が救援での登板という、リリーフ経験豊富なスペシャリストだ。

日本にも“縁”がある。18年はエンゼルスに所属し、大谷と同僚。登板は5回から2回を1安打無失点に抑えた5月27日ヤンキース戦のみだが、大谷が4番DHで出場し、相手の先発は田中将(現楽天)だった。今季は秋山とともにメジャーを目指すなど、日本人選手との“競演”経験もある。

そんな左腕は、巨人のウイークポイントに合致する。今季はドラフト1位大勢が抑えとして1勝1敗23セーブと絶対的守護神として君臨するが、救援陣の防御率は12球団で11位の3・95。ビエイラとデラロサの助っ人リリーバーは2軍で再調整中で、平内が台頭すべく奮闘するものの大勢へとつなぐ「8回の男」の確立は急務。救援左腕は今村、高梨、6月21日から1軍に昇格して5試合無失点の高木がいるが課題の完全解消には至っておらず、クロールが加われば厚みと安定感は増してくる。

メジャー時代は全球種の約40%を占めるキレのあるスライダーを軸に、150キロ前後の直球、ツーシーム、チェンジアップ、カーブを駆使。クイック投球の技術もあり、日本野球への順応にも時間はかからなそうだ。背番号は「65」となる見込み。13・5ゲーム先を独走してマジック51の首位ヤクルトとの差を少しでも詰めるべく、巨人は育成とともに万策を尽くしていく。

◆イアン・クロール(Ian Krol)1991年5月9日、米国イリノイ州生まれ。ニュークアバレー高から09年ドラフト7巡目でアスレチックス入団。13年ナショナルズに移籍しメジャーデビュー。タイガース-ブレーブス-エンゼルス-メッツ-レッズ-ツインズ-タイガースと渡り、今季はパドレスとマイナー契約。3Aで1勝1敗2セーブ。防御率7・46。メジャー通算243試合で8勝6敗1セーブ、防御率4・49。左投げ左打ち。

◆巨人のブルペン事情 昨季19セーブの最速166キロ右腕ビエイラは9試合で2敗、防御率9・82と不振。20年17セーブのデラロサも15試合1セーブ、同3・95でファーム調整中だ。成長過程の鍬原、平内に加えて左腕の今村、高梨が勝ちパターンで登板する機会が多いが、守護神大勢につなぐ方程式を確立できるまでには至っていない。先発陣も早いイニングで崩れる場面も多く、リーグ2位の322得点ながら得失点差はマイナス22。投手陣の立て直しは最重要課題になる。