FA交渉が解禁された18日、横浜からFA宣言した内川聖一内野手(28)が、横浜市内のホテルで広島と交渉を行った。野村謙二郎監督(44)の直接出馬に内川も感激。今後は横浜、ソフトバンクとも交渉を行うが、広島の速攻に内川の心は大きく傾いた。

 故郷・大分の先輩、野村監督の言葉が、内川の心を大きく動かした。「小さなころから僕らのあこがれでもある監督に『お前が必要だ。お前がチームを変えてくれ』と言われた。今まで野球をやってきてよかった。ちょっと感激というか、うれしい気がしています」。交渉解禁日の速攻にまず誠意を感じ、その上、秋季キャンプ中の宮崎・日南から野村監督が駆けつけた。広島の本気を感じ取った。

 心を動かしたのは、それだけではない。野村監督からは「カープがFA選手を獲得しに行くのは歴史的なこと。優勝すれば、お前は歴史的な選手になれる」と口説かれた。これまで広島はFAで選手を獲得したことはない。「球団初」という歴史的な意義がプライドをくすぐった。「FA移籍はすごく責任重大だと思ったが、(その言葉が)すごくありがたかった」。交渉前には硬かった表情が、気がつけば一変していた。

 条件面では3年6億円プラス出来高払い(推定)の提示をされたもようだ。横浜側の4年10億円には届かないが、内川は金額を焦点にはせず「僕にとってもありがたいぐらいの額、複数年提示をいただいた」と納得する。それ以上に満足できたことがある。「自分をどれだけ必要としているのか?」と最重要視するモチベーション面で、満点に近い答えを聞けた。「お前が入って若手をガンガン引っ張り、チームの雰囲気をガラッと変えてくれ」(同監督)。常々求めてきた「中心選手としての立ち位置」に合致する回答だった。

 今後は内々に獲得意思を伝えてきたソフトバンクと交渉する。横浜とも残留交渉を続けるが、気持ちが広島へと傾いたのは間違いない。「実際に話をきいてみて、すごくありがたいという気持ちが強いです。(移籍か、残留か)フラットな気持ちかと言われると分からない」。揺れていた内川の心を、広島が大きく引き寄せた。【鈴木良一】

 [2010年11月19日8時40分

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