<ヤクルト2-0阪神>◇14日◇神宮

 思わぬ騒動で、ヤクルトナインの闘志に火が付いた。6回、本塁クロスプレーで相川亮二捕手(37)が阪神マートンの強烈なタックルを受けて激高。その裏、内野ゴロの間に先制し、7回にはスクイズで加点し藤浪を攻略。連敗を4で止めた。5月に田中雅がマートンからのタックルで左鎖骨を骨折していただけに、因縁が引き金となった形だ。

 バレンティンの56号を期待していた神宮の空気が、がらりと一変した。6回2死二塁。捕手相川が、福留の中前打で本塁を狙った二塁走者マートンの猛タックルを受けた。吹っ飛ばされてもボールは離さず阻止。怒りは頂点に達し、マートンにつかみかかった。両軍入り乱れる乱闘騒ぎの中、暴行行為で退場処分を受けた。相川は4月にDeNAブランコからタックルされ、左肩鎖関節亜脱臼で全治2カ月の負傷を追い、5月には田中雅がマートンに骨折させられていた。

 連敗中、そして因縁。ベンチでは宮本が「この試合はもう負けられない」と言った。小川監督は「相川が体を張って本塁を守ってくれた。何とか勝たないといけない。みんなもそうだったと思う」と振り返った。

 両者の暴行は許されない。だが体を張った相川のためにも、絶対に勝つ-。最下位に沈むチームに、執念がみなぎった。その裏、三輪が内野ゴロで本塁に生還する好走塁で先制。7回には森岡が外角ボール球に飛びついてスクイズを決めた。

 さらに球場がざわついたのが、8回2死一、二塁で回ってきたバレンティンの第4打席だった。近藤通訳が「表情が違った」と言ったように、相川のためにもと気合十分だったが、3番手渡辺が初球を暴投。二、三塁となり、一塁があいた。捕手が勝負を避けるべく外角に構えると、バレンティンは苦笑い。球場全域からは大ブーイングが響き渡った。結果は1安打で、3試合連続ノーアーチ。「向こうだって本塁打を打たれたくない。今日の藤浪は素晴らしかった」と、冷静に振り返った。神宮6連戦の最終日となる今日15日は台風の影響が懸念される。「こうなったら球場うんぬんでなく、1本打ってすっきりしたい」と本音を漏らした。

 試合後、相川は「大丈夫です。普通のプレーで自分がエキサイトしてしまっただけです。すみません」と言い、気丈に笑顔を見せて帰路に就いた。相川は病院で検査を受けた模様。小川監督は「大丈夫」と話しており、骨には異常なく、頬が少し腫れていたが打撲で済んだようだ。

 珍しく猛抗議した小川監督は「2度もやられるとたまったものじゃない。阪神のベンチも申し訳ないと言っている。格闘技じゃないんだから」と怒り心頭だった。CS出場は絶望的な状況だが、ヤクルトに勝利への執念がよみがえった。【浜本卓也】<ヤクルト捕手激突VTR>

 ◆相川-ブランコ

 4月6日DeNA戦(神宮)の4回2死一、二塁。DeNA中村の右前打で二塁走者のブランコが本塁突入して相川と激突。相川はブロックで生還を阻止したが、6回の守備から交代。左肩鎖関節の亜脱臼で全治2カ月のけがを負った。

 ◆田中雅-マートン

 5月12日阪神戦(松山)の4回1死一、三塁。阪神藤井彰の中飛で三塁走者マートンがタックルで本塁突入。田中雅は生還を阻止したが5回の守備から交代。左鎖骨骨折と診断された。小川監督は「完全なラフプレー。とんでもない」と怒りをあらわにした。