<ソフトバンク1-3日本ハム>◇2日◇ヤフオクドーム

 日本ハム上沢直之投手(20)が、プロ初登板初先発初勝利を飾った。ソフトバンク相手に6回を散発3安打1失点。多彩な変化球を駆使して李大浩から2三振を奪うなど7奪三振の快投だった。身長187センチで「松戸のダルビッシュ」と呼ばれた高卒3年目右腕が、記念の白星を手にした。

 初めての勝利の味は、ちょっぴり刺激的だった。上沢はベンチで両手を握りしめハラハラドキドキ。初白星の瞬間を祈った。歓喜の瞬間がやってくると、思いきり手をたたいた。バンザイした。プロ初登板初先発初勝利。ヒーローインタビューで「率直に、うれしいです」とはにかんだ。プロ3年目。入団同期6人のうち近藤ら4選手は既に1軍を経験していた。「長かったです。悔しい思いもありました…」。少し言葉を詰まらせ、笑顔でスタートラインに立った。

 約束の3年目に花開いた。専大松戸高時代、プロ志望届を提出した瞬間から勝負は始まっていた。同校の持丸修一監督(65)と決めた覚悟。「3年でクビになったら、大学に入り直す」。当時の指揮官から「それくらいの覚悟がないとダメ」と交換条件でプロへ進むことを許された。

 その3年かかってたどり着いた大舞台。無我夢中で強力打線に立ち向かった。打者の手元で伸びる直球は最速146キロをマーク。キレ抜群のフォークではカウントも稼ぎ、空振りも誘うなど自在に操った。4番・李大浩を2三振に打ち取るなど毎回の7奪三振。栗山監督は「風をチームに吹かせてくれた」と奮闘をたたえた。

 恩師とはぐくんだ決め球が生きた。フォークは高校2年時に、わずか1週間で習得。当時から手先が器用で勉強熱心だった。ある練習試合ではベンチの指示を無視して配球を試したこともあったという。持丸監督は「ずうずうしいけど、それがかわいいんだよ」と多少のワガママも受け入れ成長を見守ってきた。その恩師へ、最高の恩返しをした。またひと回り成長した上沢は「慢心するわけじゃないけど自信を持っていきたい」と新たな誓いを立てた。

 大エースの系譜を受け継いだ。身長187センチの大型右腕で、高校時代の愛称は「松戸のダルビッシュ」。初登板初先発初勝利は05年のレンジャーズ・ダルビッシュ、10年の「埼玉のダルビッシュ」こと中村も達成。「ダルビッシュ伝説」を受け継いだ。

 1月に2軍の鎌ケ谷を訪問したダルビッシュと初対面。ブルペンで投げる姿を、練習を一時中断して前のめりになって見学した。その後は興奮気味にボールの握り方や足の動きをキャッチボールで即、実践。「何だか良くなった気がします」と無邪気にはしゃぎマネした大先輩に、少し並んだ。勢い十分に大きな背中を追いかけ始めた。【田中彩友美】

 ◆上沢直之(うわさわ・なおゆき)1994年(平6)2月6日、千葉・松戸市生まれ。小学校ではサッカーに打ち込み、松戸一中で野球を始める。専大松戸では甲子園出場なし。11年ドラフト6位で日本ハム入団。昨年のフレッシュ球宴で優秀選手賞。187センチ、88キロ。右投げ右打ち。