<セCSファイナルステージ:巨人4-8阪神>◇第4戦◇18日◇東京ドーム

 阪神が巨人に4連勝し、9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。

 阪神のCS突破に大きく貢献した福留孝介外野手(37)が、日刊スポーツに独占手記を寄せた。開幕3戦目だった3月30日巨人戦。飛球を追って西岡と激突した福留は、自身も大けがを負いながら試合に出続けた。特別なシーズンに秘めた思いを明かした。

 みんなで一気に決めることができた。相手に流れを渡さずに決めたいと思っていたから。東京ドームで、俺も、ツヨシも打って勝てたんだから。今年はスタートでああいうこと(※)があって、ここで勝って終われたというのは、何かがあったんでしょう!

 

 選手の立場から言えば、巨人との差はそんなにないと思っていた。もし、そこまでの差があるんだったら前半戦でもっと離されていた。あそこまで競り合うことはできなかったはず。9月に甲子園で3連敗したけど、CSでは勝てた。シーズン中はそこまで開き直ってやることができなかった。だめなら仕方ないと、ぶつかっていくことがCSではできたんだ。

 個人的には体の状態が戻ったことが大きい。開幕3戦目で激突して、しばらく走り込めなかった。少しずつ走ったり、体の強化ができるようになって夏くらいに動けるようになった。6月に2軍に落ちたことで打撃フォームを少し変える踏ん切りもついた。積み重ねが今につながったと思う。

 阪神にきて2年、批判されたり、やじられたりもした。「何やってんだ!」って言われても、何か思うこともない。いつも結果の責任を取るのは自分だから。ただ、阪神ファンは、そういうやじの中に、だめな時でも「頑張れよ」と言ってくれる人がいる。うれしかったな。そういう声だけは聞いていたよ(笑い)。

 俺は苦しいとか、つらいとか思わない。そう思うことがあるとすれば、自分の意思では体がどうしようもなくなった時かな。それが去年の膝であり、今年の3月30日だった。どんなに痛くても意思で何とか体が動いてくれればプレーできる。ただ、あの激突の後はどうしようもなかった。意思を体が拒絶していた。

 でも、激突した後、1つだけ決めたことがあった。ツヨシが病院に運ばれた以上、俺はどんなことがあっても試合に出続けようと思った。ツヨシはああ見えてすごく気をつかう男だから。もし、俺が「痛い」と言ったり、試合に出なかったりしたら、あいつは自分の責任だと思ってしまう。実際にツヨシはぶつかった後に「申し訳ありません」って言っていた。投げていた榎田だって気にしていた。ぶつかった時、俺は前を向いていたからよかったけどツヨシは後ろ向き。だから、俺は守備だけでもできるなら、何も言わずにプレーしようと決めたんだ。

 6月下旬、ツヨシがグラウンドに戻ってきた後、あのプレーについて2人で笑って話せるようになった。それでもツヨシは「僕が深追いしすぎました」って言っていた。そういうヤツなんだよ。でも、開幕カードの巨人戦だから自然にテンションは上がる。声が聞こえないのだってあの歓声の中なら仕方ない。そこにあれしかないという打球が飛んでしまったんだよ。

 うちはベテランが多いけど、そういう選手がきっちりと自分の仕事をしている。新井さんは代打が中心だったけど、スタメンの時よりもグラウンドを走っていた。1打席のために、何本もダッシュしていた。セキ(関本)だって、1打席のためにどれだけ早くから球場にきて準備しているか。それでも、1打席も立たずに終わることがある。そんな姿を見ているから俺の代打で新井さんや、セキを出されても何も思わない。打ってくれって思えるよ。

 去年のCSを藤浪や、大和が経験したということも大きいし、経験ある選手がそういう姿勢を見せていた。球団としてビールかけはないんだけど。きょうは選手みんなでビールかけしたい気分だな!(阪神タイガース外野手) ※3月30日、巨人との開幕カード第3戦だった。2回2死一、二塁。巨人大竹の打球が二塁と右翼の間へ。これを追った西岡と福留が激突し、両者倒れた。西岡はあおむけに倒れたまま、動けず、救急車が東京ドームのグラウンドに入り、そのまま緊急搬送された。西岡は鼻、肋骨(ろっこつ)などを骨折し、6月下旬まで戦線離脱となった。福留も鎖骨骨折、肺挫傷などで4月は打率1割台と苦しんだ。