阪神からドラフト5位指名された藤川俊介外野手(22=近大)が11日、大阪府内の同大で黒田編成部長らの指名あいさつを受け、入団の意思を伝えた。就職内定先だった東邦ガスとの問題はクリアし、球団側と初めて会談。「いろんな方に迷惑をかけて、申し訳ありませんでした。僕の中で気持ちの整理がついた」。まだ表情は硬かったが、念願だったプロ入りに大きく前進した。

 10月29日のドラフト会議から1カ月以上がたった。問題が長期化することで藤川自身も体重が5キロ減るほど悩み抜いた。その末の決断だが、実はもうひとつ決意を固めていた。それは栄光の数字を背負うことだ。この日、条件面の交渉は行われなかったが、真弓監督や今岡が付けた背番号「7」が提示される予定だ。伝え聞いた藤川側はその重みに困惑した。しかし気持ちを動かされたのは、東邦ガスの存在だった。同チームの「T」というロゴマークは数字の7に似ていた。「これも何かの縁だ。東邦ガスの思いを背負うためにも、頂いていいんじゃないか」という話になったという。

 下位指名ながら、一ケタの数字が与えられるのは異例だが、それも期待の裏返しだ。くしくも同じ外野手の赤星が現役を引退した。俊足強肩の藤川は後継者の素材を備える。「僕も尊敬していた先輩なので、近づけるように努力したい。守備と走塁でアピールして、できるだけ早く試合に出たい」。気持ちを吹っ切って、誓いの言葉を飛び出した。今回の問題で何度も話し合いを重ねた恩師の榎本保監督(54)はこんなゲキを飛ばした。「レギュラーを取って、“右の赤星”と言われるようになってもらわないと、東邦ガスさんに恩返しできない」。近日中にも正式契約を交わし、たった1人の入団発表に臨むことになる。【田口真一郎】