大相撲の世話人、友鵬さん(享年60)のあまりに急な訃報に接し、悲しみが止まらない。運営のほとんどを「協会員」が担う特殊な大相撲の組織にあって、世話人の存在は貴重で、その仕事は多岐にわたっていた。あらゆる雑用をこなす縁の下の力持ち。中でも友鵬さんの“笑顔”はずばぬけていた。ちょっとしたトラブルがあっても、その人懐っこい、何ともいえない柔和な笑顔が解決した。

 相撲担当時代を思い出す。両国国技館の南門が関係者出入り口で、そこに設置された小屋に世話人たちが常駐する。記者は朝稽古を取材し、昼ごろに場所入りするのだが、個人的にそこはまさに“関所”だった。

 いつからか身を隠すようにこそっと通過するようになった。それは…。「おー、飯食って行けよ」。見つかると、小屋の友鵬さんから声がかかる。ありがたいこと、だがしかし…。「相撲飯」は半端ない。

 例えばどんぶりなど、店側も気を利かせた通常の2倍以上の特盛り。残せば「えびすこ弱し」のレッテルを貼られ、完食すれば「えびすこ、つええな」の喝采。頑張るしかない。さらに後押しは友鵬さんの笑顔だ。たとえ場所入り前に昼飯を済ませていようとも「友鵬飯」は必ず完食し、死にそうになった。

 もちろん、飯を食うだけではなく、いろんなことを教わった。角界のしきたり、ある力士の特徴、裏話…。お世話になったことばかりで、恩返しもできぬまま、訃報に触れることになってしまった。相撲人気が盛況を取り戻した今、友鵬さんが活躍する舞台はここからだった。ご冥福をお祈りします。本当にお世話になりました。安らかにお眠りください。【元相撲担当・実藤健一】