年が明けた。今年のスポーツの中心は何といっても東京オリンピック(五輪)・パラリンピックだが、角界にも新たな波が起きるのではと期待している。

九州場所でも連日満員御礼で相撲人気の活況ぶりを実証した。しかし、気になる材料もある。横綱白鵬が盤石の強さで優勝を決めた場所だが、長年の相撲ファンからは「それにしても大関がだらしなかよ」とぼやきを聞かされた。

何とか優勝争いに踏みとどまったのは貴景勝だけ。豪栄道、2桁勝利で大関復帰を目指した栃ノ心は早々と休場。かど番の高安も腰の負傷で途中休場し、初場所は関脇に陥落となった。貴景勝に御嶽海、朝乃山ら新たな力が頭角を現してきた一方で、大関が優勝に絡めていない。17年初場所の稀勢の里以来、17場所も“空白”が続く。

かつて、日刊スポーツ評論家だった大横綱の大鵬親方にお話を聞かせてもらえる機会があった。その言葉が印象に残っている。「俺は大関に上がった時もあまり喜べなかった。大関という地位には、まだ上がある。上があるからには、目指さないといけない。横綱までいけばその先はない。辞めるしかないんだ」。

角界の看板を背負う力士の覚悟がうかがえた。もちろん、横綱を目指さない大関はいない。不運なケガなどが重なっての結果だが、やはり横綱を脅かし、その地位を目指せる存在が出てきてこそ、より土俵は活気づくと思っている。

今年はそんな力士の登場を期待したい。初場所で新関脇に昇進した朝乃山は、九州場所の優勝一夜明け会見で白鵬が名指しで期待感を口にした。安定してきた右四つの相撲がより確立されれば、その存在になれる1人かもしれない。そして「自分も」と後に続く力士が出てくる。綱とりを狙える。今年はそんな大きな期待をかけてみたい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)