弟弟子の新十両昇進を自らのことのように喜んでいた。秋場所(9月13日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議で王輝(24=錣山)の新十両昇進が決定。先月13日に引退した兄弟子の元前頭青狼のアムガー・ウヌボルド氏は、7月場所前から「王輝は(7月場所で)絶対に関取を決めると思う」と自信満々に話していた。場所後には「やっぱりね」とニヤリ。「今までは(三番稽古で)10番やって1回も負けなかったけど、(引退前の)春場所前の稽古では2、3番と負けるようになった。体も重くなったし、なんたって誰よりも稽古をしている。頑張っているしいいやつ。みんなの手本になってくれると思いますよ」。引退後に羽織と着物をプレゼントするほど期待していた存在だけに、心の底から喜んでいる様子だった。

王輝自身も5日の新十両昇進会見で、師匠の錣山親方(元関脇寺尾)から「『自粛期間中、一番稽古したのは一毅(本名)だから』と言われて自信が持てました」と明かしていた。自他共に認める努力家。「これからも稽古場でも人一倍汗をかいて弟弟子の手本になるようにやっていきたい」という言葉が頼もしい。

7月場所中には部屋頭の前頭阿炎(26)が、コロナ禍でのキャバクラ通いが発覚。場所後の理事会では出場停止3場所、5カ月50%の報酬減額の懲戒処分を受けた。復帰は来年春場所以降で、幕下下位からの再出発となる見通し。部屋にとっては暗い話題となっただけに、阿炎の今後の改心はもちろん、王輝には部屋の看板力士としての役割が一層求められる。

記者も昨年10月の新潟・糸魚川市で行われた秋巡業で、王輝が幕下ながら大歓声を浴びていたことが印象に残っている。出身の新潟県関川村は、7月末時点で人口が5368人。「自分が知らなくても向こうは知ってくれて声かけてくれる。うれしいです」。錣山部屋を背負う関取として、村の星として、十両デビューの秋場所で注目を集める。【佐藤礼征】

王輝(左)は寄り切りで矢後を下す(撮影・小沢裕)
王輝(左)は寄り切りで矢後を下す(撮影・小沢裕)