30年ぶりのWWEによる英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会が9月3日(日本時間4日)、英カーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。前回は前身WWF時代となる92年8月29日、英ロンドン・ウェンブリースタジアムで開催されたサマースラム大会だった。北米以外で初開催された最初のスタジアム興行は8万355人のファンが集結。日本でおなじみのロード・ウォリアーズが盛り上げ、デイビーボーイ・スミスことブリティッシュ・ブルドッグがメインイベントを締めくくった。

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第5回となった真夏の祭典サマースラム大会はWWF(現WWE)による世界進出第1弾イベントだった。中米、南米、欧州だけでなく、アジアなど日本のプロレス市場も意識したカードがそろった。ダークマッチ3試合を経て、テレビ放送が開始された第4試合にはホーク、アニマルによるロード・ウォリアーズがリージョン・オブ・ドゥームのユニット名でタッグ戦に出場した。

暴走族風バイクに乗って花道から入場したアニマルとホークの姿に、8万人以上のファンが熱狂。テッド・デビアス、I.R.S組と戦い、アニマルがデビアスをロープに投げてI.R.Sとの誤爆を誘発させた。よろめくデビアスを捕獲したアニマルがパワースラムでとどめを刺し、8万人のファンを総立ちにさせた。WWFタッグ王座戦には、元大相撲・琴天山(琴天太)で全日本プロレス入門したジョン・テンタがアースクエイクのリングネームでタッグ王者としてタイフーンと組んで出場し、確実に王座防衛を成功させた。

WWFヘビー級王座戦では90年から抗争が続いた王者ランディ・サベージ-アルティメット・ウォリアー戦が組まれた。試合のなかったリック・フレアーの介入でサベージが左足を負傷して敗退する波乱だった。セミファイナルでは怪奇VSアフリカン対決の異色対決が実現。「地獄の墓堀人」ジ・アンダーテイカーが、全日本プロレス参戦の初代ジャイアント・キマラことカマラと対戦。敵セコンド乱入でアンダーテイカーが反則勝ちした。

メインイベントのWWFインターコンチネンタル王座戦では、義理の兄弟が対決した。王者ブレット・ハートに義弟ブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)が挑戦。試合前、ハートの妹でブルドッグの妻ダイアナ夫人が複雑な心境を吐露し、心配そうにスタンドで観戦。ハートによる執拗(しつよう)な裸絞め、シャープシューター(サソリ固め)などをしのいだブルドッグがリバース式回転エビ固めで勝利を収めて王座を奪取した。

次々と花火が打ち上げられる中、ハート一族で繰り広げられた抗争はノーサイドに。勝者ブルドッグ、ダイアナ夫人、王座陥落したハートの3人が並んで8万人のファンの声援に応じる最高のフィナーレとなった。英マンチェスター出身のブルドッグがWWFインターコンチネンタル王座ベルトを獲得したことで、英国のプロレスファンも大満足の幕切れとなった。

30年の時を経て、22年9月、英国にスタジアム大会が戻る。ブルドックに代わり、英スコットランド出身の元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイアがWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズに挑戦する。両者には30年前のメインイベントで繰り広げられた親族による「メロドラマ」はない。強者同士による好ファイトとなる。マッキンタイアが母国エースとしてのプライドを見せるか。700日以上最高位王座を保持してきた絶対王者レインズが王者の意地をみせるのか。

30年前、ブルドッグのセコンドには元WBA、WBC、IBF世界ヘビー級統一王者レノックス・ルイス(英国)がいた。マッキンタイアのセコンドに、WWE参戦経験のある現WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)がつくようなことがあれば、大きな話題となりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆クラッシュ・アット・ザ・キャッスルの発表済みカード◆

☆WWEヘビー、ユニバーサル王座戦=王者ローマン・レインズ-挑戦者ドリュー・マッキンタイア

☆スマックダウン女子王座戦=王者リブ・モーガン-挑戦者シェイナ・ベイズラー

☆6人タッグ戦=ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリス組-ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日にWWEネットワークでライブ配信

WWFヘビー級王座戦で王者ランディ・サベージ(左)と握手するアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFヘビー級王座戦で王者ランディ・サベージ(左)と握手するアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で王者ブレット・ハート(左)と激闘したブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で王者ブレット・ハート(左)と激闘したブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で、王者ブレット・ハート(右)と握手するブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で、王者ブレット・ハート(右)と握手するブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFタッグ王座に防衛したジョン・テンタことアースクエイク(左端)とタイフーン(右端)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFタッグ王座に防衛したジョン・テンタことアースクエイク(左端)とタイフーン(右端)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
公式発表8万355人の観客で埋まった英ロンドン・ウェンブリースタジアムでの92年サマースラム大会(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
公式発表8万355人の観客で埋まった英ロンドン・ウェンブリースタジアムでの92年サマースラム大会(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.