「日本史上最大の挑戦」は失敗に終わった。WBO世界スーパーウエルター級6位亀海喜寛(34=帝拳)が初の世界戦で、4階級制覇王者ミゲル・コット(36=プエルトリコ)に0-3の大差判定で敗れた。世界で5本の指に入る超大物に接近戦を展開したが、老練な技術、足さばきに決定機を作らせてもらえなかった。熱戦で価値を上げ続けて米国9戦目。周囲の評価は不動で、今後も本場で戦う意思を示した。

 「カモン!!」。最終12回、残り40秒、亀海はコットに呼び掛けた。前進で圧力をかけ、パンチを放ち続けたが、決定機は作れなかった。勝負は決していたが、たどり着いたひのき舞台に、最後まで全力を尽くす意志がみなぎった。

 2回にはアッパーの連打で出血した。その後も見た目にはパンチで顔がゆがんだが、「顔をそらしてダメージを逃がしていた」。首をひねって衝撃を減らす高等技術を随所に見せたが、1試合で18億円を稼ぐコットの技術力も超一流だった。時には小走りで接近戦に引き込んだが、打ち終わりに連打、さらに柔らかい上体と足でさばかれた。

 至近距離で異常な手数で押す。10年に日本王座に就いたころは、守備的。世界で戦うために大胆に変えた。「やめた方がいいと言って離れていったファンも多かった」。それでも信念を貫いた。圧倒的な体力を得るためのサーキット練習では、そのきつさから、開始前に緊張で心拍数が上がりすぎて1セット飛ばすこともあった。

 激戦で本場を魅了し、米国9戦目で巨頭にまみえた。「レジェンドですが、勝負の一戦に変わりはなかった。残念の一言です」と落胆は隠せない。ただ、同時に積み上げた評価は落ちなかった。中継局HBO幹部からは「またチャンスを作る」と約束もされた。

 入場ではブーイングは少なく、むしろ「カメガイ!」と外国人の発音で声援は飛んだ。それが評価の証し。「またビッグネームとやりたい」。日本史上最高の大物に苦杯をなめたが、終わりではない。【阿部健吾】