元東洋太平洋スーパーフライ級王者井上拓真(21=大橋)が、打撃戦を制して復帰を飾った。昨年秋に右拳を痛めて、年末の世界初挑戦が中止になった。日本同級2位久高寛之(32=仲里)との昨年9月以来約1年ぶりの試合。序盤は左ジャブで先手を取って攻勢だったが、徐々にベテランの術中にはまって打ち合い。終盤には両者が激しい打撃戦に会場を沸かせ、3-0の判定勝ち。デビューから無傷の9連勝とした。

 井上は「左だけで2カ月スパーした。左でコントロールし、5、6回でKO」のもくろみだった。それが4度世界挑戦した久高に合わせてしまい、打撃戦に持ち込まれた。井上も強気の気性が出て打ち合った。終盤にはともに「来い!」のポーズで、ノーガードの打ち合いの場面も。3日に米国へ出発する世界王者の兄尚弥も、大橋会長も立ち上がって声を上げた。

 8回にはきれいなワンツーで、久高の左まぶたを切り裂いて流血させた。採点は最大6ポイント差がついたが、打ち合いは互角の戦いだった。井上は「もっと簡単に行くと思ったが、さすがベテラン。最後までズルズル行き、反省会が怖い」と笑みはなかった。

 父の真吾トレーナーも「ベテランにはまった。試合としては面白かったけど、うちとしてはもっと直さないと」と苦笑い。大橋会長は「冷や汗かいたが、かけがいのない経験ができた。気持ちで負けなかったのは今後に大きい」と闘志をほめた。尚弥も「これ以上ない経験ができた。ダメな部分を練習すればいい」。

 井上自身も「右拳はまったく問題ない。スタミナも。打ち合えたのはよかった」と手応えもあった。今度こそ世界挑戦で兄に追いつきたい。大橋会長は「来年にバンタム級で世界挑戦させたい」とのプランを示した。