WBO世界フライ級王者の木村翔(29=青木)が、元世界王者で同級1位の五十嵐俊幸(33=帝拳)に9回TKO勝ちして初防衛を飾った。

 荒々しい大振りのパンチで初回から前進、攻勢に出続けた。中盤までは足を使う五十嵐の執拗(しつよう)なジャブをもらう場面もあったが、被弾を恐れずに、ひたすらに前に出て黄色いグローブを振り続けた。「持ち味はアグレッシブにガンガン行くこと」。言葉どおりのボクシングを展開して、追い込んだ。

 決着は9回。8回にフックでぐらつかせ、顔面も血に染まる相手を仕留めにいった。「レフェリーは止めるまで殴り続けろ!」という有吉会長のゲキを受けて飛び出すと、ギアを上げて殴りかかっていった。最後は五十嵐をコーナーに追い詰めて、ラッシュで顔面をはね上げて、レフェリーが試合を止めた。

 コーナーポストに登って雄たけびを上げ、「僕にとっては力が試される試合だった。五十嵐選手は根性の強い選手なので勝てて良かった」とホッとした。

 7月に敵地中国で五輪2連覇の鄒市明を撃破してベルトを手にした。その後に同国で放映されたテレビ番組で、世界王者となってもアルバイト生活を続ける姿に共感が集まり、一躍時の人になった。いまでは卓球の福原愛に次ぐ知名度を持つとまで言われる。ただ、あくまで日本では「無名ですから」と自認をしていた。だからこそ、大みそか、生中継の舞台に意欲は満々だった。そして、見事に持ち味を出し切り、インパクトを残した。

 「いまは減量がめちゃくちゃ楽」とフライ級でも、まだまだ肉体改造の余白は残している。「もっともっとパンチ力もつけられると思う」と伸びしろも十分。次戦は鄒市明と再び拳を交える可能性があり、「中国でもどこでもいい」と粋に語った。