00年7月2日、男女トップレスラーによる伝説のシングル対決を行った天龍源一郎氏(68)と神取忍(54)が、18年ぶりにトークバトルで“対決”した。23日、東京・目黒のスタジオCLASKAのステージで、2人は笑顔で思い出話に花を咲かせた。

注目の一戦は、神取からの対戦要求で実現した。「日本全国で、何で天龍さんと戦うんだっていう空気でいっぱいだった。この日本で、アントニオ猪木とジャイアント馬場を倒した男は天龍さんしかいない。絶対負けるんだけど、1%の可能性にかけた」と、神取は当時の思いを語った。

神取が対戦をお願いに行ったとき、天龍は「オレは男だから容赦なくいくよ」と神取に念押しした。神取は即座に「覚悟は決まっています」と返答。「だったらいいよ」と天龍も対戦を承諾した。

試合は1回3分のラウンド無制限1本勝負で行われた。天龍は、逆水平チョップや、背中へのサッカーボールキックなど手加減のない打撃を神取に加える。2回には神取の顔面にグーパンチの連打。顔面が大きく腫れ上がり、ふらふらになったところで、神取のセコンドからタオルが投げ入れられた。天龍のTKO勝ちで試合は終わった。

「あの頃、男子が女子とやると、手加減したり、わざと技をかけられたり、お遊びのような試合になった。でもオレは、結果的にああいう展開になって良かったと思っている」と天龍氏は話した。それでも「試合中は、オレも神取を殴りながら、『もう、ギブアップしろよ!』って叫んでいたよ」と明かした。

一方、神取は「あのときは気が遠くなって、終わったんだ、自分はどうなっちゃうんだという思いと悔しさが入り交じっていた。いろんな試合をしたけど、あのときの痛みを越えるものはない」と振り返った。

試合後、控室で倒れている神取を天龍氏が訪ね「これを腫れているところで転がすと、腫れが引くぞ」と生卵を渡した。半信半疑で試してみると、腫れは少しずつ引いていき、2日後には治ったという。神取は「私は、山本小鉄さんにプロレスは思いやりと教わった。天龍さんの根底にも、やさしさや愛をすごく持っていた」と神取は言う。

伝説の一戦について天龍氏は「あの時代は、ああいうプロレスのやり方しかなかった。思い出に残る試合の1つだよ。真っ向からぶつかっていったつもり」と言った。神取は「あの試合から気持ちの持ち方が変わった。怖いものが無くなった。次にいける気持ちの強さをもらった」としみじみと話した。