前王者で同級1位・寺地拳四朗(30=BMB)が、ベルトを取り戻した。王者・矢吹正道(29=緑)とのダイレクトリマッチで3回でワンパンチKOした。

第1ラウンド(R)から、寺地は前に出て、プレッシャーをかけた。矢吹はじっくりと構えて、ジャブをついた。両者ともに決め手のないまま終わった。

第2Rはさらに前に出て、右ストレートを再三ヒットした。

終幕は突然訪れた。1分過ぎ。接近戦を嫌がって、後ろに下がった矢吹を追い打ち。がら空きのあごに右ストレートがクリーンヒット。矢吹は頭ががくりと後ろにのけぞり、そのまま崩れ落ちた。

寺地は「あー、うれしい。あー、あー。あー、よかったあー」と感無量の表情。「皆、僕のスタイル、びっくりしたでしょ。あれが新しい作戦で。倒しにいくと決めていた」。

寺地は、試合前から「あのベルトを早く返してもらいたい」「圧勝したいです」と自信を示していた。有言実行の勝利となった。

因縁の試合だった。

昨年9月22日に9度目の防衛戦で矢吹と対戦した。具志堅用高のV13を視野に入れおり、寺地優位とみられていた。

しかし8月末に新型コロナウイルス感染が判明した。

試合直前の時期に自宅隔離となって、最終調整が狂った。

意地で上がったリング。

8回終了時点で最大6ポイント差の0-3だった。

9回に捨て身の打ち合いで矢吹を追い込んだが、10回に返り討ちにあった。

プロ19戦目での初黒星で陥落した。

この一戦は昨年の年間最高試合に選出された激闘だった。

両者の因縁は、試合後も続いた。反撃に出た9回に寺地は右目上をカットして出血。陣営は「故意のバッティング」と主張し、JBCに質問状を送付した。

JBCの「レフェリーの判断に問題はなかった」とする回答書を不服として再抗議もした。

WBCが再戦を指示したことで、日本人王者同士、異例のダイレクトリマッチが組まれていた。

 

◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう) 1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。奈良朱雀高→関大。アマ戦績は58勝(20KO・RSC)16敗。14年8月にプロデビュー。15年12月に日本ライトフライ級王者、16年8月に東洋太平洋同級王座を獲得。17年5月にWBC世界同級王座を獲得し8連続防衛。プロ戦績は19勝(11KO)1敗。身長164・5センチの右ボクサーファイター。