同級1位伊賀薫(29=真正)が、同級3位樽井捺月(30=山木)を判定2-0で下し、新王者となった。伊賀の戦績は6勝1分け2敗。樽井は4勝2分け9敗となった。

伊賀は開始直後、いきなり右ストレートでダウンを奪う。その後は守りに入ってしまったが、4回にも右フックで2度目のダウン。ジャッジ1人が56-56のイーブン、2人が58-54でベルトを手にした。

ベルトを肩にかけた試合後は「日本王者になるのが夢でした」と少し涙ぐみ、「ココイチうれしいです」と言った。優位に進めながら、相手の気迫に押される場面もあった。「ふがいない試合だったが、何とか勝てました」。

王者への道は健康のため始めたボクササイズからだった。島根県の浜田商を卒業した伊賀は、新たな可能性を求めて神戸に出てきた。社会人としてなまっている体を動かすために始めたのがボクササイズ。その指導を受けていたトレーナーが、真正ジムと関係があり、興味本位でボクシングの世界に入った。

「自分がチャレンジしたいと。人生勉強のためにと入門しました」。当時の仕事はスポーツクラブのトレーナー。周囲の誘いもあってプロテストを受け、19年2月にプロデビューを飾った。

学生時代は陸上の中距離選手。専門は1500、3000メートルで全国都道府県対抗女子駅伝のメンバーに選ばれたこともある。「スタミナ、体力には自信があります」。築かれた土台にボクシングの技術を注入し、ベルトを手にした。

さらに上を見据え、「まだまだ足りないと思うが、世界王者を目指したい」。陸上選手ではかなわなかった世界一へ、力強く踏み出した。【実藤健一】