判定決着だったが、両選手とも12回を通じて決定的なクリーンヒットをほどんどもらわなかった。最近ではなかなか見られない、ディフェンスの技術レベルの高い試合だった。ニエテスは防御勘に優れ、井岡一翔はガードも高かった。

井岡が完勝した要因は左ジャブとスピード。特に左ジャブは1回からダブル、トリプルと間断なく出してペースを引き寄せた。ニエテスの目尻を切り裂いたことでも分かるように、ノーモーションで繰り出されるパンチは実にシャープだったことで、ニエテスは回を追うごとに打つ手がなくなった。

井岡が世界戦で20勝もできたのは、左ジャブを軸としたボクシングの基本がしっかりしているから。自分の距離で戦い、打たせないのでダメージも少ない。それが今日の試合内容に凝縮されていた。彼の一番の持ち味が出た試合だった。

ワンツーをはじめ、彼のパンチはノーモーションで出てくる。そこからコンビネーションでボディーに返す。上から下へ。だからボディーブローもよく当たる。ニエテスも何度もいやな顔をしていた。下への防御を意識すると、今度は上へのノーモーションのパンチを浴びてしまう。つまり井岡の攻撃はすべて連係している。それが彼の強さ。まさに総合力。4団体統一も十分にいけるでしょう。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)