東洋太平洋、WBOアジア・パシフィック・スーパーウエルター級王者井上岳志（34＝ワールドスポーツ）がドローで防衛（東洋太平洋初、WBOアジア・パシフィック3度目）に成功した。メインで東洋太平洋同級1位、WBOアジア・パシフィック同級8位ウェイド・ライアン（34＝オーストラリア）の挑戦を受け、1－0（115－113、114－114×2）の判定で引き分け。規定によりベルト2本を死守した。

圧力をかけてきたライアンに対し、井上は距離を保ちながら得意のボディー攻撃、右強打を狙った。8回終了時の公開採点まではリードしていたものの、終盤はライアンとの打ち合いを続けて試合終了。ドローという結果を受け「中間距離で中途半端になっていたのでインファイトに切り替えた。負けなくて良かった。ほっとしています」と安堵（あんど）の表情を浮かべた。すると、18日に死去が明らかなった同門の後輩で日本ユース・ライトフライ級王者だった坂間叶夢さんの名を口にした。

井上は「坂間叶夢という素晴らしいボクサーがいたことを忘れないでほしい」と涙を流した。

試合前にかわいがっていた後輩の訃報は耳にしていた。「気持ちを切り替え、万全で戦った。実力通りの結果。精いっぱいやった形で、納得している」と言いながらも、数少ない後輩の死去を受け、大きなショックを受けていたことは間違いない。井上は「恥ずかしくない生き方をしようと。命を張ってボクサーとしてリングに上がっていたんだなと。尊敬に値する人間。あまりにも信頼しすぎて『あいつは大丈夫だ』と思っていた部分が、彼を追い詰めた形になっていたのではないかと反省する部分がある。悔いのないように生きようと思いました」とタオルで涙をぬぐった。

減量が苦しかった坂間さんに試合後、ご飯をおごるという約束をしていたが、実現できなかった。井上は「（坂間さんは）天国にいると思う。自分も良い行いして天国にいって、試合後にご飯をおごる約束を果たしたい」と言葉を振り絞っていた。