挑戦者の力石政法(29=LUSH緑)が、最終12回の大逆転TKOで勝利した。
「最高! まわりのおかげ、チームの勝利です」
日本未公認の同級シルバー王者マイケル・マグネッシ(29=イタリア)に敵地で挑んだ。愛称「ローンウルフ=一匹おおかみ」のマグネッシは、おおかみのかぶり物で登場、大歓声に迎えられた。
ホームの利そのままに1回から、圧倒的にマグネッシのペースだった。身長178センチの力石に対し、マグネッシは168センチ。その差を生かしたい力石は距離をとろうとしたが、その懐に飛び込み強いパンチを放った。
第4ラウンド終了時の公開採点は2人がフルマーク、残る1人も39-37で王者を支持。マグネッシの強烈な圧力と手数に防戦一方の力石は6回に鼻血で顔を染め、9回終了後はドクターチェックを受けた。
「やばかったですね。左右にスイッチしてきて右(のパンチ)も強かった。ガンガンくるとは想定していたけど、何回か効いたパンチはあった」
ポイントを奪われ続けた10回、残り30秒でついにきっかけをつかんだ。左フックからの猛連打。ゴングに救われたが、マグネッシの表情は明らかに豹変していた。続く11回。「最後はがむしゃらにいくしかなかった。玉砕覚悟」。押し込む流れをつかみ、最終12回を迎えた。
30秒過ぎ、力石の右フックがあごをとらえてダウン経験のないマグネッシをキャンバスにはわせた。さらに1分過ぎに左ストレートで2度目のダウン。ラッシュをかけ、試合を止めた時にマグネッシはフラフラと自ら腰を落とした。ダウン判定はなかったが、力石はとどめの猛連打を食らわせると2分34秒、パナマ人のレフェリーはようやく試合を止めた。
マグネッシは試合後、担架で運ばれた。壮絶な試合にセコンドについた元WBC世界ライトフライ級王者の兄・矢吹正道(31)は「すごかった。声がかれてしまった」。力石は「スタミナは回を重ねるごとに回復していったぐらい」。左あご付近を大きく腫らしたが「骨は折れていないと思う。大丈夫」と言った。
いよいよ夢の世界挑戦に王手をかけた。WBCの同級王者は22戦無敗のオシャキー・フォスター(米国)。敵地でも十分に戦える力を証明した力石だが、「海外はイヤですわ。広いリングでやりたい」。
試合前にWBCの規定に満たないリングのサイズを巡って、力石陣営が「(ファイターの)マグネッシに有利」と猛抗議する経緯もあった。そんなアウェーの洗礼も乗り越えた大逆転勝利。夢の兄弟世界王者へ、「永遠の都」ローマの地で力石の名を世界にとどろかせた。
◆力石政法(りきいし・まさのり) 本名・佐藤政法。1994年(平6)6月10日、三重県鈴鹿市生まれ。3歳からボクシングを始める。やんちゃを繰り返し少年院に入ったこともあったが、18歳から本格的に打ち込む。17年7月プロデビュー。22年5月東洋太平洋スーパーフェザー級王者、23年1月にWBOアジアパシフィック同級王座獲得。身長178センチの左ボクサーファイター。プロ戦績は15勝(10KO)1敗。