4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(33=大橋)がビッグマッチを制し、防衛(WBC、WBOは8度目、WBA、IBFは7度目)に成功した。WBA、WBC、WBO世界同級1位中谷潤人(28=M・T)の挑戦を受け、判定3-0(116-112、116-112、115-113)で勝利。4団体統一王者としても7度目の防衛成功となった。
場内インタビューで「勝ちに徹する。今夜、勝つのは僕ですという戦いを実行しました」と振り返った。日本ボクシング史上最多5万5000人のファンへ「じっくり見ていいですか? 今夜、僕が見ている景色は、僕1人占めですけど、皆さんが集まってくれたからこその景色。また東京ドームに戻ってきたい。また皆さん集まって、この景色を見せてください」と呼びかけ。今後については「ちょっと未定ですけど、去年4試合、今年と決まっていて。張り詰めた去年と今日までだったので、少しゆっくり休ませてください。お願いします。少し休んでから、大橋会長、父と今後の対戦相手を決めたい。また皆さんが燃えるようなファイトをしたい。期待していただけたらうれしいです」と語った。
両者ともに国内記録のデビューから32連勝という無敗対決。米老舗専門誌ザ・リング選定のパウンド・フォー・パウンド(PFP=体重差が同じと仮定した最強選手)ランキング(井上2位、中谷6位)入り同士という世界注目のスーパーファイトだった。史上初の日本人同士による4団体統一タイトル戦を制し、世界戦通算勝利数もオマール・ナルバエス(アルゼンチン)と並ぶ世界歴代2位となる28勝に伸ばした。
2年ぶり2度目の東京ドームのメインイベンターだった。88年、90年と同会場でメインを務めた元統一ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)に並ぶ偉業を勝利で飾った。昨年3月、ボクシング年間表彰式で中谷に対戦を呼びかけ、お互いに勝利を重ねて実現した日本人対決。1日の計量後、井上は「伝説は井上尚弥だったと言わせるような日にしたい」と意気込んでいた。集まった5万人以上の観衆に向け、モンスターがいまだ「時代」を担っていることを証明してみせた。
井上にとって16年の河野公平戦以来、約10年ぶりとなる日本人との世界戦だった。自らの勝利で中谷との対決ストーリーに終止符を打った。井上は「負けられない? そういった重圧は毎試合乗り越え、32戦を戦ってきている。重圧は今に始まったことではない。ただこういった大一番で負けられない気持ちは強い。僕のボクシング人生はここで終わりではないので通過点」と話していた。「主役」の座を明け渡さなかった。
ボクシング興行に力を入れているサウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官がリングサイドで視察。同長官の大きなバックアップを受け、次戦も「ドリームマッチ」に臨むことになりそうだ。さらに大きな舞台が用意されそうだが、4団体統一王者としてスーパーバンタム級の留まるのか。それとも世界5階級制覇を目指し、フェザー級に転向するのか。いずれにしても井上からは今後も目が離せない。
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏の影響で小学1年から競技開始。高校でアマ7冠。12年7月にプロ転向。14年4月、6戦目でWBC世界ライトフライ級王座を奪取。14年12月、WBO世界スーパーフライ級王座を獲得し2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年5月にIBF同級王座、同年11月、WBSS同級制覇。22年12月、史上9人目の4団体統一王者に。23年7月にWBC、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得して4階級制覇。同12月に史上2人目となる2階級での4団体統一に成功。身長164・5センチの右ボクサーファイター。
▽激闘のラウンドVTR
【1回】互いに様子をうかがう静かな立ち上がりとなった。先に仕掛けたのは井上。軽快なステップから右ストレートを放った。その後もフェイントの掛け合いとなったが、サウスポーの中谷がタイミング良くカウンターを繰り出す場面もあった。
【日刊採点】井上の10-9
【2回】1ラウンドに続き、この回も中谷はジャブを中心に相手の様子をうかがう。井上はスピードのあるパンチを繰り出すが、中谷は一貫してカウンターを狙う。終盤に井上が距離を詰めて打つと、中谷が左フックを放ちどよめきが起こった。
【日刊採点】井上の10-9
【3回】中谷が払うようなジャブで距離感を保つが、井上は中谷が足を滑らせたのを見逃さずパンチを打ち込む。中盤以降、井上はプレッシャーを強める。右のボディーストレートも効果的に決まる。
【日刊採点】井上の10-9
【4回】序盤から井上が攻め込む姿勢を見せる。中谷も得意の左フックを放つ。井上が上へのジャブからボディーストレートで翻弄(ほんろう)。中谷も強力な左ストレートで応戦する。
【日刊採点】井上の10-9
【5回】井上の右ストレートさく裂。細かいパンチも当たり始める。中谷もガードの隙間から入れるような右フックを披露。中谷が巧みなフェイントを見せる。終盤には中谷が思い切って踏み込んで打つ場面も見られた。
【日刊採点】井上の10-9
【6回】中谷が踏み込んでボディーストレートを当てる。中谷が長いリーチを生かしたパンチを見せ、積極的に出る。終盤は井上が攻めたが、中谷のアッパーが井上の顔をかすめる。
【日刊採点】井上の9-10
【7回】中谷が立ち上がりから積極的に前に出て攻撃。井上も強力な左ストレートで応戦。中谷は変則的なパンチを見せるなど手数の多さも見せる。終盤は互いに様子を探り合って終了。
【日刊採点】井上の9-10
【8回】序盤から激しい打ち合いの様相。井上の鋭いジャブ、右フックが入る。中谷もボディー、右フックとスピード感あふれる攻撃を披露。互いに笑みを見せる場面も。中谷が重圧をかけ、アグレッシブに攻撃する。
【日刊採点】井上の10-9
【9回】中谷が8回同様にプレッシャーをかける。ロープ際に追い込み連打を浴びせる場面も。井上も足を動かしてワンツーを当てる。井上がジャブを効果的に放つが、中谷の右アッパーも決まる。
【日刊採点】井上の9-10
【10回】開始から距離が詰まる。中谷の右が顔面に当たり、井上がのけぞる。中谷が右からの左ストレートを決め、井上の動きが止まる。偶発的なバッティングで中谷が左の眉付近をカットし、試合が一時中断。再開されると、中谷が再びアグレッシブに攻め込む。終盤に井上がアッパーを放つ。
【日刊採点】井上の9-10
【11回】距離が短くなり、互いに手数が増える。打ち合いになるが、井上が左アッパーを決めると中谷が後退。10回の負傷で左目が開かない中谷は、被弾する場面が増える。終了まで井上が右、左とアッパーを打つ。
【日刊採点】井上の10-9
【12回】井上が序盤から近い距離でパンチを繰り出すが、中谷は防戦一方。井上の右ショートフックが顔面を捉える。中盤に井上が時計を見る場面も。井上はガードを下げて、相手の様子をうかがう。中谷は攻めきることができなかった。
【日刊採点】井上の10-9

