横綱鶴竜(32=井筒)が4場所連続休場からの復帰場所で2連勝を飾った。低く、強く。新三役貴景勝のお株を奪う立ち合いだった。突いて、押した。手数、精度で上回り、前に出続け押し出した。「自分の相撲をしっかりとれた。すべて流れの中でのこと。だから自然と体が動く」。前日は北勝富士相手に勝ったが、最後は引いた。初日を超える内容に口調は軽い。

 昨年7月名古屋場所を右足首負傷で途中休場した時、師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は「次に出るときは結果を出さないといけない」と言った。“進退場所”での2連勝発進は、体調管理の成果だ。爆弾を抱える両足首にテーピング、サポーターはない。「肉が落ちる。筋が弱くなると言われた。強くするために我慢してね」。その分ケアをする。患部を冷やさぬよう、モンゴル製のウール素材の靴下をはいて寝る。

 わずか2日で、場内の歓声から悲哀の色が消えた。扱いは「強い横綱」に戻ってきた。自分の居場所に戻った喜び。「(そうなるように)苦しい中で頑張ってきたから」。4場所連続休場中、ファンからの手紙、国技館で書かれたメッセージは全部目を通し、力に変えてきた。「乗り越えられない試練を、神様は与えない」-。知人から教わった言葉を胸に、耐えてきた。

 16年九州場所以来となる優勝争い参戦を感じさせる2連勝。「明日が千秋楽だったらね」。緩みなく、力強く、笑ってみせた。【加藤裕一】