元横綱の貴乃花親方(46)が日本相撲協会に退職の届け出を提出したことで、花田家が大相撲界から完全決別することになる。1946年(昭21)、伯父で元横綱初代若乃花の花田勝治氏(享年82)が、二所ノ関部屋に入門してから72年。父で元大関貴ノ花の故満氏(享年55)、兄で元横綱3代目若乃花の虎上(47)と重ねた幕内優勝回数は、39回に及ぶ。その歴史を見てきた母でタレントの藤田紀子(71)が取材に応じ、息子の決断を「見事」と称賛した。

貴乃花親方の母、藤田は都内の自宅で会見のテレビ中継を見ていた。母子関係が断絶して13年。1度も連絡を取り合ったことはないが、その一本気な性格を知り尽くすゆえに、気持ちを理解していた。

「『見事』と言ってあげたいです。告発状を取り下げたのに、役員が『内容を事実無根と認めるように』と迫ったのが本当なら、何かの裏を感じますが、光司はそういうことでは折れないタイプ。相撲界を離れることは本当に無念だとは思いますが、信念を曲げなかった。母としては、うれしい気持ちもあります」

貴乃花親方は、幕内優勝2回の父を尊敬し、当時の藤島部屋に15歳で入った。努力を重ねて横綱になり、22回優勝。同時入門の兄虎上(まさる)は5回優勝。部屋は兄が継ぐものだと思っていたが、引退から9カ月の00年12月18日に退職した。母も部屋を出て01年に離婚。「相撲あっての花田家」の思いから、父が亡くなった05年5月30日以降は、2人との関係を絶った。その本人が、協会に退職の届け出を提出。花田家と大相撲の歴史は72年で幕を閉じるが、母はそれを支持した。

「貴乃花は一代年寄であり、親から受け継いだ名跡ではありませんから、退職するのも光司だけの決断でいいと思います。この72年を立派に締めくくってくれたと理解しています」

実は、貴乃花親方が平年寄になった時点から、藤田は「早く相撲協会を退職すべき。もう、これ以上いても苦しいだけ。離れても十分に生きていける」と考えていた。

「15歳でゼロから相撲を始め、すさまじい努力をしてきた子ですから、少々のことではへこたれません。これから、またいろんな可能性が広がるわけで、楽しみでもあります」

貴乃花親方は1度決めたことを貫徹してきた。藤田も、これで関係が修復するとは思ってはいないが、「体のことが心配ですし、何かあれば、守ってあげたい気持ちはあります」と話している。【柳田通斉】