大相撲の大関高安(田子ノ浦)が29歳の誕生日を迎えた28日、1年以内の初優勝を目標に掲げた。この日は兵庫・尼崎市の園田競馬場内に構える部屋で、1月の初場所中に引退した兄弟子で元横綱稀勢の里の荒磯親方と三番稽古を行った。計27番で9勝18敗と大きく負け越したが、春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)への手応えは十分。早速「29歳の誓い」を実現するつもりだ。

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何度も土俵に転がされ、泥まみれになっても高安は「もう一丁お願いします」と食い下がった。荒磯親方の手荒い誕生日祝いに、途中、9連敗する場面もあった。それでも圧力、推進力なら、いまだ現役トップクラスの同親方に真っ向からぶつかった。計27番で約37分間、競馬場の一角で激しいぶつかり音を響かせた。数々の「平成生まれ初」の冠を奪い、世代の先頭を走っていた高安も29歳。「20代最後の年。この1年勝負をかけて、結果を出して花を咲かせたい。優勝目指して精進します」と誓った。

この宣言に説得力を持たせるミラクルも起きた。この日、部屋を構える園田競馬場の第5レースは「祝 大関高安関お誕生日記念」と銘打たれた。個人名を自由に入れられる協賛競走で、稽古後の高安も同レースを観戦。すると、この日の番数の27番が何かを予言していたように「2-7」で決まった。関係者やスタンドで観戦した「第72代横綱」の荒磯親方らから次々と「よっしゃ」との声が上がり、周囲に歓喜をもたらした。

27番は高安が納得するまで続けられたものだ。前日27日の20番や、ここ数場所の場所前と比べても多かった。レースを前後して取材対応した高安は、馬券を購入していなかった様子で「非常にいい稽古だった。番数をこなして体力をつけていきたい」とあくまで冷静。

9勝止まりだった初場所の千秋楽パーティーでは「結果を出せず悔しくて」と涙を流した。現在の横綱、大関陣で唯一、優勝経験のない中、小結御嶽海や関脇貴景勝らに先に初優勝をさらわれた。「あとは安定感」。予言者のような格好となった高安は、早速「29歳の誓い」を有言実行するつもりだ。【高田文太】