角界屈指のサラブレッドが、荒れる夏場所の主役に躍り出る。西前頭2枚目琴ノ若(24=佐渡ケ嶽)が、大関正代を突き落としで破り、2日連続の大関撃破。ここまで2場所連続2桁勝利を挙げて優勝争いを経験するなど、期待の若手が頭角を現してきた。

2日目にして早くも三役以上に土が付き、初日から2連勝は平幕9人のみとなった。

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祖父譲り、いや、父親譲りか。取組を終えた琴ノ若は、毅然(きぜん)とした態度で一番を振り返った。「俵の上に片足が残ったイメージがあった。勝ったとは思っていなかった。もう一丁あると思って土俵に戻りました」。連日の大関撃破にも笑みは見せず、静かな口調だった。

下から低く当たった立ち合い。はじいて正代に差しを許さず、その後も差しを狙う相手をいなして横に動いてかわした。それでも右を差されたが我慢。何とかほどいていなそうとしたが、また体を寄せられた。土俵際へ後退。それでも右足一本で俵の上に残りながら、左に突き落とした。軍配は琴ノ若。ほぼ同時に土俵を割る形となったが、物言いは付かず。「ポイント、ポイントで冷静に取れたと思う」と焦りはなかった。

祖父に元横綱琴桜、父に師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)を持つ期待のホープ。角界入りは必然で、祖父や父と同じく幕内の土俵で満員の観客を沸かせることを夢見てきた。しかし、新入幕だった20年春場所は、新型コロナ感染拡大の影響で史上初の無観客開催。その後も、観客数は通常開催の50%などに制限されてきたが、今場所からは約87%の9265人に緩和。7月の名古屋場所からは通常開催となる。「やっぱり拍手がいつもより大きい。ありがたい。力になる」と連日、気合が入る。

2場所連続で優勝争いを経験するなど、実力と自信を着々とつけている。3日目は大関御嶽海と対戦。初日から3日連続大関撃破となれば、平幕としては昭和以降4人目となる。2日目にして早くも、連勝発進は平幕だけと荒れ模様の今場所。「先のことは考えずにきっちりと白星を重ねていきたい」と優勝争いはまだまだ意識しないが、今場所も中心の1人になる。【佐々木隆史】