現役東大生6人が12日、二所ノ関部屋(茨城・阿見町)を訪れ、朝稽古を見学した。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と同部屋付きの中村親方(元関脇嘉風)に指導を受けながら稽古に励む力士たちの姿を食い入るように見つめた。稽古後には二所ノ関親方に直接感想を述べ、東大生ならではの視点でさまざまな質問を投げかけた。

今回の企画は東大と吉本興業ホールディングスで立ち上げた「笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト」の一環で、同部屋の協力により学生たちの「相撲部屋体験入門」が実現。多くの伝統的な習慣や日本文化が残る大相撲の世界を身を持って体感し、新しい視座を得ることが目的だ。

この日は2面土俵を要する広々とした稽古場を生かし、二所ノ関親方と中村親方が分かれて指導に当たった。四股や腰割りなど基本動作に長く時間を取った後、申し合いへ移った。白まわしを締めた二所ノ関親方も加わり、名古屋場所で序ノ口優勝した高橋(23)を相手に10番取って全勝。間近で見ていた学生たちは現役を退いてもなお強さ健在な元横綱の姿を目に焼き付けていた。

2時間半余りの稽古を見た後には「迫力に圧倒された」「一つの動きを極める姿勢はどこでも同じなんだと思った」など二所ノ関親方に思い思いの言葉で感想を伝えた。稽古をする上で大事にしているポイントを尋ねると、同親方から「けがをしない体づくりが大事だから、基礎を徹底している。上を目指すために、3年後に出世するための稽古をしている」との答えを得た。一つの道を究めたからこそ出てくる説得力のある言葉の数々に学生たちは熱心に耳を傾けていた。

参加した東大生6人中5人が初めての稽古見学だったが、持ち前の高い洞察力を生かして有意義な時間を過ごした。過去に稽古を見学したことがあったという教養学部3年の増田和俊さんは「土俵2面あるという利点を最大限生かして稽古していた。二所ノ関親方が基礎を重視している点に感動しました」。名古屋場所で序ノ口デビューを飾った同じ東大の須山についても場所中の成績をチェックしていたといい「同じ大学の出身力士ということで意識しますね」と相撲界に興味津々だった。

学生たちは今後、土俵築体験や秋場所(9月11日初日、両国国技館)の見学をし、その後は同部屋がある茨城・阿見町の地域創生策を出していく予定。二所ノ関親方は「こういう世界もあるということを知ってもらうのは良い機会。同世代の力士たちにとっても刺激になる」と期待を寄せた。