5月の大相撲夏場所中に引退した、元大関栃ノ心のレバニ・ゴルガゼさん(35)が19日、都内の春日野部屋で日刊スポーツのインタビューに応じた。来年2月4日に東京・両国国技館で引退相撲を行うと決まったこと、今後は日本に住み、ワインやハチミツなど母国ジョージアの製品を日本で展開する貿易業を行うことなどを明かした。また名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)で大関とりの豊昇龍、大栄翔、若元春の3関脇にはエール。特に豊昇龍には将来の横綱昇進を期待していた。【取材・構成=高田文太】

 

-断髪式は決まったか

ゴルガゼさん(以下、栃) 来年2月4日に国技館でやることが決まりました。引退相撲なので関取衆にも協力してもらいます。これから、いろんなところにあいさつに行かないと。忙しくなるなぁ(笑い)。

-現在も所属していた春日野部屋によく来ている

栃 そうですね。忙しくなければ週5日ぐらい、稽古で胸を出しています。今月の(埼玉・入間市の)合宿も行きました。来月は名古屋も行くし。引退しても同じような生活(笑い)。

-第2の人生は

栃 貿易の仕事ですね。ワインとかハチミツとか、ジョージアのものを日本に広めたい。ジョージアは体にいい食べ物、飲み物が多いから。ワインも昔からの造り方で防腐剤を使っていないし。友人と東京で「ロイヤルジョージア」っていう会社をつくりました。社長? 社長じゃないよ。オレは平社員だよ(笑い)。

-日本とジョージアを行き来する生活になるのか

栃 いや、日本に住みますよ。ジョージアには、たまに帰るぐらいだと思う。

-引退相撲までは大きな体を維持しないといけない

栃 もう30キロも落ちちゃった。(夏場所6日目の5月19日に)引退する少し前と比べて。痩せたでしょ?

-痩せたかも。あと、もみあげに白髪が見えるが

栃 そう! 増えちゃった。ひげなんか特に。前は普段なら1週間に1回、場所中は5日に1回、ひげをそっていたけど、今は3、4日に1回。そうしないと真っ白になっちゃうから。

-まげとの別れは

栃 17年半も一緒だからね。さみしいけど、シャンプーもできて、楽になるから楽しみでもありますね。

-来場所は大関とりが3人。元大関として助言は

栃 最初が大事。2勝、3勝としてくると乗ってくる。大関とりの場所は、考えないようにしていても、どうしても意識しちゃう。何から何まで自分との闘いだから自分に勝たないと。

-豊昇龍、大栄翔、若元春の3人をどう見ている

栃 3人とも本当に強いですよ。大栄翔と若元春は自分の型を持っている。2人と比べると、豊昇龍は型がないけど、すごい投げとか、何をするか分からない面白さがある。型のある力士を好きなファンも多いけど、お客さんの7、8割はそういう何をするか分からない面白さを歓迎すると思う。(おじの)朝青龍関も強かったもんな。早く横綱になってほしいですね。

 

◆栃ノ心剛史(とちのしん・つよし)本名レバニ・ゴルガゼ。1987年10月13日生まれ、ジョージア・ムツケタ出身。元欧州ジュニア王者の柔道やサンボを経験。06年春場所初土俵。08年初場所新十両。同年夏場所新入幕。13年名古屋場所で右膝に大けがを負い、幕下まで転落したが18年初場所で初の幕内優勝。同年夏場所後に大関昇進。今年夏場所6日目の取組前に引退。優勝1回。三賞は殊勲賞2回、敢闘賞6回、技能賞3回。金星2個。得意は右四つ、上手投げ。引退の夏場所は192センチ、176キロ。

<取材後記>

欧州ジョージア出身らしい、栃ノ心の明るさは健在だった。現役最後の夏場所は初日から5連敗。出てくるのは「恥ずかしい相撲」「お客さんに申し訳ない」などと暗い言葉ばかりだった。だがこの日の取材では本来の明るさや「ワッハッハ」という豪快な笑い方が戻っていた。この日はテレビの収録もあり、稽古後に浴衣に着替えて現れると、部屋とテレビ局の両関係者が思っていた中、キャラクターTシャツと短パン姿で登場。部屋付きの三保ケ関親方(元前頭栃栄)に「パジャマか!」とツッコミを入れられ、爆笑を誘った。

第2の人生を歩みつつ、後進の育成を担う立場の現在は、肩の荷が下りたのだろう。達者な日本語で、引き込まれるような話術も健在。大関時代もプールやサウナ、バーまで備えた豪邸をジョージアに建設中と、嫌みな印象もなく話していた。豪快につった取組後はジョージア発祥の「チタオバ」という格闘技が生きたと語るなど、引き込まれる内容が多かった。「日本の心を持ってほしい」と名付けられたしこ名の通り、日本人の心をくすぐる言動は今も魅力だ。【高田文太】