日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)が、還暦となる60歳の誕生日を迎えた22日、東京・両国国技館で日刊スポーツのインタビューに応じた。

9月2日に両国国技館での還暦土俵入りや、4年ぶりに一般公開される横綱審議委員会(横審)稽古総見を併せて行うことも明かした。コロナ禍に突入した20年3月の春場所で「相撲が先陣を切る」と、真っ先に無観客開催を決断した舞台裏などを振り返るとともに、角界の未来、かなえたい夢なども語った。【取材・構成=高田文太、平山連】

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-還暦おめでとうございます

八角理事長(以下、八) 現役の時は早く60歳になりたいと思っていました。60歳になれば、楽になると思っていたんでしょうね。まさか、そのころ見ていた栃錦さん(先々代春日野親方)と同じように、60歳で理事長をやっているとは。(93年9月に)部屋を持ってから、あっという間の30年。周りの支えのおかげで今がある。幸せもんです。

-還暦土俵入りは

八 9月2日に国技館でやることになりました。太刀持ちは隠岐の海(現君ケ浜親方)、露払いは北勝富士の予定。(19年8月31日以来)4年ぶりに横審の稽古総見を一般公開でやるので、その後に。1人でも多くの人が、相撲と触れ合う機会が増えればと。これまで還暦土俵入りは、関係者しか見たことがないから。ファンサービスを兼ねて。しなびた体だけど、私も一肌脱がないと(笑い)。

-体も鍛え続けている

八 現役を辞めてから2回、肘を手術したけど、一応、体は動かしている。

-ただこの3年間、コロナ禍で忙しかったのでは

八 20年の春場所は、1人でも感染者が出たら本場所を中止しないといけなかった。これは専門家の先生が決めたこと。毎日「あと何日」と言っていて苦しかった。生きた心地がしなかったですよ。開催するかどうかも議論になりました。でも「無観客でもやらなきゃダメだ」と決断。本当によかったと思っています。

-他の国内プロスポーツに先立ちコロナ禍で開催

八 相撲は、ただのスポーツじゃないというのが大きいですよ。神事だから。四股を踏んで邪気を払う。野球よりもサッカーよりも「相撲が先陣を切る」と思っていました。一方で神事だからこそ途中でやめるわけにもいかない。出かけたい盛りの年齢も多いが協会員がよく我慢しましたよ。

-この経験で変化は

八 頭を柔らかく持とうと思うようになりました。例えば千秋楽の結びは横綱同士が当たるものと思っていたけど、何でも決めつけない。神事であり、興行であり、スポーツですから。

-今後のビジョンは

八 少子化が進む中で、いかに相撲界に入りたい若者を増やしていくか。若手の親方衆でチームもつくって取り組んでいる。そのために身長、体重の基準(167センチ以上、67キロ以上)の見直しも考えていきたい。

-将来の夢は

八 ハワイに飽きるまでいたいですね(笑い)。2週間以上とか。今は毎日必死ですけど、いつかはそんな生活を送りたいですね。

◆八角信芳(はっかく・のぶよし)本名・保志信芳。1963年(昭38)6月22日、北海道広尾町生まれ。九重部屋に入門し、79年春場所初土俵。立ち合いの当たりと突き、押しを武器に83年春場所新十両、同年秋場所新入幕。86年名古屋場所後に大関に昇進し、しこ名を本名の保志から北勝海に改名。87年夏場所後に第61代横綱に昇進。92年春場所限りで引退。通算591勝286敗109休。優勝8回、殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞5回、金星1個。15年12月に理事長に就任。