「令和の高見盛」が躍動している。再入幕で東前頭15枚目の熱海富士(伊勢ケ浜)が、9勝で単独トップに立った。平幕高安を押し倒しで圧倒。大関経験者との1敗対決を制した。21歳には、北の湖に次ぐ史上4位の年少優勝記録の期待がかかる。2敗は高安、3敗は大関貴景勝ら5人が追う展開となった。

9勝目で優勝争いの先頭に立った。「勝てて良かった。落ち着いていけたかな」。熱海富士はトレードマークの人懐っこい笑顔をみせた。立ち合いから力強く踏み込むと、大関経験者の押し、突き放しにもひるまず圧力で押し込んだ。スキを見逃さず強烈な右の突きで土俵上に転がした。

再入幕の21歳が台風の目になった。勝てば満面の笑みを浮かべ、敗れればガックリと肩を落とす。猛稽古で知られる伊勢ケ浜部屋では、時に涙を浮かべながら泥にまみれる。そんな人間味あふれる姿に、部屋付きの楯山親方(元前頭誉富士)は「令和の高見盛だ」と喜怒哀楽を素直に表現した人気力士に重ね合わせる。今場所について「肩の力が抜けて、稽古場でできなかったことが自然とできるようになった」と評価した。

注目度が増す中でも本人はマイペース。報道陣から館内の盛り上がりも「日に日に大きくなっている」ことを問われると、「体ですか?」と天然ぶりを発揮。このまま先頭を明け渡さなければ貴花田(19歳5カ月)、大鵬(20歳5カ月)、北の湖(20歳8カ月)に次ぐ史上4位の年少優勝記録となるが、「まだ5日あるんで。あと5番も全部勝ちたい」と気を引き締めた。【平山連】